ヤング・サイエンティスト・シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施するものです。
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米国研究製薬工業協会(PhRMA)
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)、日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)
特別プログラム |
9:00~ | Pfizer 3D(Drug Discovery & Development) ※参加者が定員に達したため申し込みは締め切りました。 ファイザー株式会社によるゲーム感覚でスクリーニングから上市までの研究開発プロセスを学ぶ体験型研修プログラム。 ※1グループ8名に分かれて行います |
開会挨拶 | 14:00~ | 原田 明久 米国研究製薬工業協会(PhRMA) 在日執行委員会 副委員長 ファイザー株式会社 代表取締役社長 |
第1部 | 14:05~ | 【モデレーター】 桑原 宏哉 厚生労働省 医政局 研究開発振興課 治験推進室 室長補佐 草間 真紀子 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 戦略推進部脳と心の研究課 課長 講演1
蓮見 惠司 講演2
鳥居 慎一 講演3
革新的医療技術創出拠点プロジェクトとアカデミアシーズの実用化 井本 昌克 |
第2部 | 16:40~ | パネルディスカッション
【モデレーター】 |
閉会挨拶 | 17:55~ | 野中 健史 米国研究製薬工業協会(PhRMA) S&Rリーダーシップ委員会 委員長 ヤンセンファーマ株式会社 取締役 研究開発本部長 ※プログラム、登壇者、講演タイトル及び内容などは都合により予告無く変更する場合がございます。 |
モデレーター
モデレーター
講演1:講師
講演2:講師
講演3:講師
モデレーター
アステラス製薬株式会社 開発本部開発推進部 上席専任理事
日本薬理学会(評議員)
日本薬学会、レギュラトリーサイエンス学会
モデレーター
パネリスト
千葉大学医学薬学府客員教授
日本血栓止血学会代議員
レギュラトリーサイエンス学会理事
日本薬学会レギュラトリーサイエンス部会常任理事
パネリスト(第一部より)
蓮見 惠司、鳥居 慎一、井本 昌克、草間 真紀子
血栓溶解を促進する化合物SMTPの発見と開発
超高齢化を迎えた現代社会での主要死因は脳心血管病とがんであり、その克服は社会的・医療経済的な重要課題である。脳心血管病のリスク因子は極めて多様であるが、最終的な病態形成の要因は血栓である。それゆえ、血栓形成の制御と生じた血栓の効果的な溶解が脳心血管病の予防と治療に有用である。一方、生理的な血栓形成と血栓溶解(線溶)は極めて精緻に制御されているため、それに対する介入――例えば抗凝固剤、抗血小板剤、血栓溶解剤の使用――によるベネフィットは出血性副作用のリスクとトレードオフとなる。さらに、虚血組織への血液の再灌流による組織傷害(虚血再灌流障害)が再灌流療法の問題点になっている。
我々は、生理的な血栓溶解を促進する生理活性物質を求めて探索研究を行ってきた。その結果、数々の新規化合物を含む多様な小分子化合物に活性を見出した。その全ては凝固線溶系のプロテアーゼ前駆体(zymogen)の「かたち」を変えることによって作用を発現するものであった。その中の一群の化合物SMTP(カビStachybotrys microsporaが作るtriprenyl phenolの頭文字からとった命名)は、血栓溶解酵素プラスミンの前駆体プラスミノゲンのコンホーメーション変化により、そのフィブリンへの結合とプラスミンへの活性化、すなわち血栓溶解を促進する。また、これとは別にSMTPは、炎症制御に関わる細胞内酵素 可溶性エポキシドハイドロラーゼを阻害し、抗炎症作用を発揮する。この二つの作用が相まって脳梗塞の病態改善に著効を示す。さらに、従来の血栓溶解剤(プラスミノゲンを活性化する酵素製剤t-PA)とは異なり、SMTPは出血を助長せず、むしろ脳梗塞の出血合併を抑える。これらの成績をもとに、2014年から株式会社ティムスにおいてSMTP同族体の一つTMS-007の臨床開発を開始し、現在、急性期脳梗塞患者を対象とした前期第2相試験を進めている。この開発により、出血性副作用とトレードオフではない、真に有用な血栓溶解療法が確立できるものと期待している。
日本のサイエンスを活かした創薬の可能性
本稿では米国系製薬会社に勤務している視点から私見を述べさせて頂きたく思います。同時に日本からの創薬をGlobal開発に橋渡し出来る可能性と日本からのアカデミア創薬を後押ししている活動について述べたいと思います。約30年前の医薬品業界を振り返ってみると当時は日本からの新薬が毎年華々しく学会等で発表され、日本製薬の黄金期と言っても良い時期でした。新薬の多くは低分子化合物であり、複雑な構造式の化合物の全合成過程などが日本の有機合成の優秀さの証明でした。また、日本の十八番の発酵工学を活かした発酵生成物ライブラリーを用いたスクリーニングで世界をリードしていました。しかし現在は創薬という観点では欧米から遅れをとっているのが現状であり、その背景と要因を考えてみます。
1)当時は治療領域が抗菌剤や消化器系など比較的in vitro、in vivoモデルからヒト臨床効果が予測可能。
2)ランダムスクリーニングによる新骨格が発見出来る余地。
3)現在は開発の中心が抗体医薬に移り、Molecular Targetが中心に移行。
4)現在のGlobal臨床試験の圧倒的な高額化。
5)Global臨床開発を牽引できる人材、組織が必要。主要当局と交渉できる薬事的経験値が必要。
以上を含めDiscussionしたいと思います。
革新的医療技術創出拠点プロジェクトとアカデミアシーズの実用化
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)は、医療分野の研究開発における基礎から実用化までの一貫した研究開発の推進、研究成果の円滑な実用化等を総合的かつ効率的に行い、「医療分野の研究成果を患者さんやそのご家族に一分一秒でも早く届けること」をミッションとして2015年4月に発足しました。AMEDは国が定める「医療分野研究開発推進計画」に基づき、医薬品創出、再生医療、がん等9つの統合プロジェクトを中心とする研究開発を推進していますが、そのひとつとして、「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」があります。
本事業では、文部科学省が進めてきた大学病院の臨床研究や治験を支援する「橋渡し研究戦略的推進プログラム」と厚生労働省が進めてきた大学病院やナショナルセンターの病院の臨床研究や治験を支援する「革新的医療シーズ実用化研究事業」及び「医療技術実用化総合促進事業」を一体的に運用し、大学等の画期的な基礎研究成果を一貫して実用化につなぐ体制を構築するとともに、質の高い臨床研究・治験を実施する体制の整備を推進しています。
本講演では、AMEDの成り立ち・役割等について概説するほか、「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」において実施されている橋渡し研究拠点や臨床研究中核病院のARO(Academic Research Organization)機能の強化、若手研究者や支援部門を対象とした人材育成などの取組みと課題等について紹介するとともに、アカデミア発の医療シーズ開発の出口としての実用化について考えてみたい。
2013年から「ヤング・サイエンティスト・プログラム」の一環として米国研究製薬工業協会(PhRMA)の支援のもと、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団(本部:米国ワシントンDC)とともに実施している、グローバルに活躍する人材育成を目的とした米国研修プログラムです。本年9月の実施で、第6回目を迎えました。
具体的には、医薬に携わる日本の若手研究者を米国に短期間派遣し、米国におけるトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品研究、規制慣行について知見を広げ、この経験をもとに新たなシーズ創出へと活かす機会を提供しています。
派遣される日本の医療・医薬品研究分野に携わる研究者の方々は、ワシントンDC、フィラデルフィアおよびボストン等において、米国政府の医療政策部署、シンクタンク、医薬品研究部門、民間製薬会社、大学等における関係者が、それぞれ新薬開発から製品化に至るまでの過程でどのように連携しているかを含め、米国のトランスレーショナルリサーチや医療エコシステムの実情を幅広く学ぶ機会を得ています。
今回のシンポジウムでも、企画段階から「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」参加経験者の皆様にご協力を頂きました。
プログラム詳細、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団に関しましては、下記リンクからもご参照頂けます
■The Maureen and Mike Mansfield Foundation
【2018年プログラム参加者の声】
PhRMAは去る2018年11月17日、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)において、国内の産官学の若手研究者たちを対象に、「第6回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム」と題した研究会を開催しました。
同シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施しているものです。創薬分野における若手研究者の果たすべき役割の重要性をグローバルな視点で再認識してもらうこと、研究意欲のさらなる向上、創薬分野で世界的に活躍できる人材を育成することを目的としています。
第6回目となる今回のシンポジウムは、開催当初からの「産・官・学それぞれの視点から若手研究者にトランスレーショナルリサーチ(TR)の重要性を伝える」という基本路線を踏襲し、産学連携の成功事例などを題材に各代表者の方による講演、「海外展開」や「人材育成」をテーマにパネリストのそれぞれの視点から議論を行うパネルディスカッションの2部構成で実施しました。
当日の午前中には、別会場にて希望者のみを対象としたファイザー株式会社による特別プログラム「Pfizer3D」を実施しました。こちらは、実際にファイザー株式会社の新人教育で取り入れられている、ゲーム感覚でスクリーニングから上市までの研究開発プロセスを学ぶ体験型研修プログラムで、参加者は4チームに分かれ、糖尿病治療薬を例に、各プロセスの担当者として、シーズ決定や安全性・薬物動態の確認・臨床試験・承認までにおける各フェーズでの決定事項についてそれぞれの視点からディスカッションを行いました。
■特別プログラム「Pfizer 3D」
午後のシンポジウム本編は、原田 明久 PhRMA在日執行委員会副委員長の開会挨拶から始まり、厚生労働省 桑原 宏哉氏、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 草間 真紀子氏がモデレーターとなり、第1部の講演会を行いました。
初めにアカデミアから東京農工大学大学院 農学研究院 蓮見 惠司教授が「血栓溶解を促進する化合物SMTPの発見と開発」と題し、様々な方との出会いを通して化合物の探索、SMTPの発見、ベンチャー企業を立ち上げ、何度かの会社存亡の危機を乗り越え臨床試験までを行った経緯を紹介しました。
続いて企業からはバイオジェン・ジャパン株式会社 鳥居 慎一 代表取締役会長より「日本のサイエンスを活かした創薬の可能性」と題し、新薬創出における日本の過去・現在の立ち位置や、今後より新薬を創出していくにあたって産官学はもちろんのこと、医・薬・理工の協力体制の構築の重要性についても、上記SMTPのライセンス導入に至った経緯などを交え、自社の取り組みを紹介しながら講演を行いました。
最後に行政の立場から国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 井本 昌克氏より「革新的医療技術創出拠点プロジェクトとアカデミアシーズの実用化」と題し、AMEDの役割や若手研究者の育成の取り組み、他事業との連携について紹介しました。
第2部のパネルディスカッションでは、日本製薬工業協会(JPMA) 稲垣 治氏、野中 健史 PhRMA S&Rリーダーシップ委員会 委員長がモデレーターを務め、第1部の登壇者である蓮見氏、鳥居氏、井本氏、草間氏に加え、国忠 聡 日本製薬工業協会(JPMA)医薬品評価委員会 委員長がパネリストとして登壇し、「アカデミアシーズを海外展開するにあたっての問題点」「人材育成について若手研究者が望むこと」をテーマにそれぞれの視点からディスカッションを行いました。
4時間に及んだシンポジウムは、野中氏による閉会挨拶とともに幕を閉じました。
本シンポジウムの参加者からは「産・官・学の各々の特色や主張、お互いの協調が大事だということが活発にディスカッションされていて興味深かった」「日本のシーズ環境の現状や課題がよく分かった」「アカデミア発シーズをもとに実用化されたリアルな話を聞くことができてとても参考になった」などのコメントが寄せられました。
■シンポジウム
■登壇者
■『第5回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
~がん治療薬開発に必要なBio-infrastructure とは~