ヤング・サイエンティスト・シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施するものです。
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開会挨拶 | 間野 博行 国立がん研究センター 理事・研究所長 | |
第1部:講演 (大会議室) |
13:00-14:40 |
【モデレーター】 講演
「Advancing Rare Diseases Through Smarter Science」 ※ビデオ講演 Petra Kaufmann, M.D., M.Sc 講演
「日本における創薬支援(産学官連携に関するAMEDの取り組みを中心に)」 河野 典厚 日本医療研究開発機構 臨床研究・治験基盤事業部長 創薬戦略部長 講演
がん領域の臨床開発の取り組み 米盛 勧 国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科 講演
企業と日本のアカデミアがTRで協業するために必要なBio-infrastructureとマインド 廣橋 朋子 ファイザー株式会社 クリニカルリサーチ統括部 オンコロジー領域部長 |
第2部: パネルディスカッション (大会議室)/ ワークショップ (セミナーAorB) |
14:55-15:40 |
パネルディスカッション
「Bio-infrastructureを支えるための人材育成をどのように行うか?」 【モデレーター】 【パネリスト】 |
15:50-16:50 | ワークショップ (小グループに分かれてディスカッションを行います)
【モデレーター】 【テーマ】
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第3部:総括 (大会議室) |
17:00-17:50 | ワークショップの発表・意見交換
【議論のまとめ】 |
閉会挨拶 |
パトリック・ジョンソン PhRMA在日執行委員会委員長 |
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懇親会 (セミナーA/B) |
18:15-19:30 |
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モデレーター
日本内科学会 総合内科専門医 指導医
日本臨床腫瘍学会 評議員 がん薬物療法専門医 指導医
日本食道学会 評議員 食道科認定医
JCOG食道がんグループ事務局
モデレーター
講師
Petra Kaufmann is director of the NCATS Office of Rare Diseases Research. Her work includes overseeing the Rare Diseases Clinical Research Network program, Genetic and Rare Diseases Information Center, and the NCATS Toolkit for Patient-Focused Therapy Development. Kaufmann focuses on engaging a broad range of rare diseases research stakeholders to accelerate translation from discovery to health benefits through use of innovative methods and tools.
Before joining NCATS, Kaufmann was the director of the Office of Clinical Research at the National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS), where she worked with investigators to plan and execute a large portfolio of clinical research studies and trials in neurological disorders, including many in rare diseases. She established NeuroNEXT, a trial network for Phase II trials using a central institutional review board, streamlined contracting, active patient participation in all project phases, and a scientific and legal framework for partnership with industry. Kaufmann also promoted data sharing, working with multiple stakeholders from the academic, patient organization and industry sectors to develop data standards for more than 10 neurological diseases.
A native of Germany, Kaufmann earned her M.D. from the University of Bonn and her M.Sc. in biostatistics from Columbia University’s Mailman School of Public Health. She completed an internship in medicine at St. Luke’s/Roosevelt (now part of Mt. Sinai) in New York City, training in neurology and clinical neurophysiology at Columbia University, and a postdoctoral fellowship in the molecular biology of mitochondrial diseases at Columbia’s H. Houston Merritt Clinical Research Center for Muscular Dystrophy and Related Diseases. Before joining NINDS, Kaufmann was a tenured associate professor of neurology at Columbia, where she worked as a researcher and clinician in the neuromuscular division, the electromyography laboratories and the pediatric neuromuscular clinic.
She has served on scientific advisory committees for many rare disease organizations and is a member of the American Academy of Neurology Science Committee, the International Rare Disease Research Consortium Interdisciplinary Scientific Committee and the Clinical Trial Transformation Initiative Steering Committee.
Kaufmann is board certified in neurology, neuromuscular medicine and electrodiagnostic medicine. She currently sees patients in the Muscular Dystrophy Association Clinic at Children’s National Medical Center in Washington, D.C.
講師
講師
講師
「Advancing Rare Diseases Research Through Smarter Science」
Rare diseases are estimated to affect more than 350 million people worldwide, making understanding and treating these conditions a global imperative. Most rare diseases are serious or life-threatening and have a high rate of unmet medical needs. This is partly due to the severity of these diseases and also because diagnosis can be difficult. Other challenges include designing and conducting clinical trials in small populations, recruiting widely dispersed research participants and scientific experts, accessing patient data through registries and other research resources, setting up central institutional review boards for multisite studies, and attracting public and private funding. Through its work to improve health through smarter science, the National Center for Advancing Translational Sciences at the National Institutes of Health is helping to overcome these obstacles with the ultimate goal of getting more treatments to more patients more quickly.
「日本における創薬支援(産学官連携に関するAMEDの取り組みを中心に)」
医療分野の研究開発における基礎から実用化までの一貫した研究開発の推進、研究成果の円滑な実用化及び医療分野の研究開発のための環境整備を総合的かつ効率的に行うため、2015年4月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が設立されました。
AMEDでは、「医療分野研究開発推進計画」に基づきアカデミア発シーズの実用化に向けた様々な支援を行っており、①プログラムディレクター、プログラムオフィサー等を中心とした課題管理・マネジメントを図るとともに、②橋渡し研究拠点や臨床研究中核病院などのARO機能も含めた拠点の強化・体制整備などを通じ、臨床研究・治験の実施環境などの基盤整備にも取り組んでいます。また、昨今の臨床研究環境の変化を踏まえつつ、公的研究資金と民間資金を有効に活用した産学官連携に関する事業にも積極的に取り組んでいるところです。
今回の講演では、AMEDの役割をご説明しつつ、様々なAMED事業の中から産学官連携に関する取り組み例として、レジストリの構築(CIN:クリニカル・イノベーション・ネットワーク)、生物統計家人材育成及び創薬にかかる産学連携支援(GAPFREE)をご紹介し、今後の産学官連携のあり方などに関する議論の素材となればと考えています。
「産学連携による臨床開発の促進の事例:MASTER KEY Projectとは?」
転移・再発しているがんは、がんが血液やリンパ流を介して全身に広がっている状況であり、通常、局所療法の対象とならず、全身療法の対象となる。全身療法は薬物療法を指し、抗悪性腫瘍薬剤として、殺細胞薬、ホルモン治療薬、分子標的薬、免疫抗体等と様々なものがある。このような医薬品は、臨床試験によりその有効性や安全性について検討され、臨床的位置づけのある医薬品については薬事承認・保険適用となり、医療で使用できるようになる。臨床試験は通常、第I相試験で治験薬の安全性・用法・用量の評価、第II相試験ではどのがんでどの程度効果があるか有効性の評価、第III相試験は、ランダム化比較試験といい治験薬と既存の治療との比較による有効性の評価が行われる。ランダム化比較試験はかなり多くの患者さんが参加する必要のある試験である。肺がん、胃がん、大腸がんといった患者数の多いがんにおいては、このような第III相試験での評価を前提とした臨床開発が可能であり、多くの企業が様々な治験薬の臨床試験を実施し開発は活発である。一方で、10万人あたり6例未満の患者数である希少がん領域では、患者数が少ないことから第I相から第III相試験といった通常の臨床開発が困難であるために、企業の開発も患者数の多いがんに比べて活発とは言えない。臨床開発の少なさは、治療薬の少なさ・無い状況に直結するため、希少がんの診療は患者数の多いがんに比べて難渋することが多い。国立がん研究センターでは、2014年に希少がんセンターを開設し、希少がんの診療に力を入れているところであり臨床開発を活発化させることが重要と考えている。研究者として、開発の課題・解決を検討し実行することが重要であり、我々は2016年5月より、希少がん・原発不明癌・希少な組織型のがんを対象とした、MASTER KEY projectという臨床研究を展開することで希少がん特有の課題を解決し臨床開発の促進を目的とした研究を開始している。本講演では、MASTER KEY projectの概要を説明する。
企業と日本のアカデミアがTRで協業するために必要なBio-infrastructureとマインド
ファイザーは,より健康な世界の実現のために,「患者さんの生活を大きく改善する革新的な治療法を提供する」ことを目指し,日々新薬開発に従事しています。また,医薬品の最先端のサイエンスやテクノロジーの応用について,学術研究者やバイオテクノロジー企業とのパートナーシップ構築にも積極的に取り組んでいます。新薬開発には未だに解決できていない多くの課題があります。その1つが新薬開発の生産性,効率性です。新たなサイエンスの発見からDrug Discoveryを経て臨床試験につなげたとしても,その多くが世の中に出ることはありません。また昨今では複数の薬剤を用いた併用療法により,これまでの治療成績を格段に改善し,がん患者さんの生活の改善に大きく寄与することが求められています。しかし多くの新規抗がん剤が開発される中,最善の併用療法を探索することは容易ではなく,結果として多くの時間と労力が必要になっています。これらの問題点を解決する方法として,トランスレーショナルリサーチ(TR)が挙げられます。トランスレーショナルリサーチ(TR)は,基礎的な見解と臨床的な見解のギャップを補完する,あるいはそのギャップを解明する極めて有効な手法であると考えます。その一方でトランスレーショナルリサーチ(TR)を進めるにあたって,企業とアカデミアでの考え方,進め方,手法のギャップがあることも事実です。本講演では企業と日本のアカデミアがTRで協業するために必要なBio-infrastructureとマインドについて,企業の観点から考察します。
2013年から「ヤング・サイエンティスト・プログラム」の一環として米国研究製薬工業協会(PhRMA)の支援のもと、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団(本部:米国ワシントンDC)とともに実施している、グローバルに活躍する人材育成を目的とした米国研修プログラムです。本年9月の実施で、第5回目を迎えました。
具体的には、医薬に携わる日本の若手研究者を米国に短期間派遣し、米国におけるトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品研究、規制慣行について知見を広げ、この経験をもとに新たなシーズ創出へと活かす機会を提供しています。
派遣される日本の医療・医薬品研究分野に携わる研究者の方々は、ワシントンDC、フィラデルフィアおよびボストン等において、米国政府の医療政策部署、シンクタンク、医薬品研究部門、民間製薬会社、大学等における関係者が、それぞれ新薬開発から製品化に至るまでの過程でどのように連携しているかを含め、米国のトランスレーショナルリサーチや医療エコシステムの実情を幅広く学ぶ機会を得ています。
今回のシンポジウムでも、企画段階から「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」参加経験者の皆様にご協力を頂きました。
プログラム詳細、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団に関しましては、下記リンクからもご参照頂けます
■The Maureen and Mike Mansfield Foundation
【2017年プログラム参加者の声】
PhRMAは国立がん研究センターとの共催により、去る2017年11月26日、国立がん研究センター 築地キャンパス 新研究棟において、国内の産官学の若手研究者たちを対象に、「第5回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム」と題した研究会を開催しました。
同シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施しているものです。創薬分野における若手研究者の果たすべき役割の重要性をグローバルな視点で再認識してもらうこと、研究意欲のさらなる向上、創薬分野で世界的に活躍できる人材を育成することを目的としています。
第5回目となる今回のシンポジウムは、開催当初からの「産・官・学それぞれの視点から若手研究者にTRの重要性を伝える」という基本路線を踏襲して、国内のがん研究に関わる産官学の若手研究者たちと「イムノオンコロジー」、「クリニカルシーケンス」、「バイオバンク」、「ビッグデータ」、「稀少癌」など、ここ数年目覚ましい発展を遂げているオンコロジー分野のトランスレーショナルリサーチ(TR)についてディスカッションを行いました。
当日は国立がん研究センター 理事・研究所長 間野 博行氏の開会挨拶から始まり、第1部では国立がん研究センター中央病院 バイオバンク・トランスレーショナルリサーチ支援室長 加藤 健氏と、同病院 研究企画推進部 部長/JCOG運営事務局長 中村 健一氏がモデレーターとなり、米国および日本の産・官・学それぞれの研究者による講演を行いました。
初めに米国のNIH(国立衛生研究所)の研究機関であるNational Center for Advancing Translational Siences(NCATS)のPetra Kaufmann氏のビデオによる「Advancing Rare Diseases Research Through Smarter Science」と題した講演を行いました。続いて、日本医療研究開発機構(AMED) 臨床研究・治験基盤事業部長 創薬戦略部長 河野 典厚氏は、「日本における創薬支援(産学官連携に関するAMEDの取り組みを中心に)」と題し行政の立場から医薬品開発をめぐる環境の変化やAMEDによる産学連携支援・人材育成事例を紹介しました。アカデミアからは、国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科 米盛 勧氏が「がん領域の臨床開発の取り組み~臨床開発に関わる研究者の視点から~」と題し、自身の経験を踏まえたキャリアトラックの構築や希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進している“マスターキープロジェクト”を紹介しました。また産業界からはファイザー株式会社 クリニカルリサーチ統括部 オンコロジー領域部長 廣橋 朋子氏が、「企業と日本のアカデミアがTRで協業するために必要なBio-infrastructureとマインド」と題し、腫瘍免疫療法の開発において製薬企業が目指しているものや、アカデミア主導TR試験の役割とそのユニーク性、製薬企業として共同研究者の先生方へ期待することなどについて紹介しました。
第2部のパネルディスカッションでは、米盛氏と廣橋氏がモデレーターを務め、第1部の講師である河野氏に加えて、第一三共株式会社 オンコロジー統括部 バイオマーカー推進部 グローバルヘッド 村上 雅人氏、国立がん研究センター 研究所 臨床ゲノム解析部門長/先端医療開発センター ゲノムTR分野 ユニット長 市川 仁氏がパネリストとして登壇し、「Bio-infrastructureを支えるための人材育成をどのように行うか?」をテーマにそれぞれの視点からディスカッションを行いました。
ワークショップでは、参加者が4つのグループに分かれて「“基礎研究”と“臨床応用”を繋げるために・・・若手研究者からの提言」をテーマに、産・官・学の様々なバックグラウンドを持ったメンバーが、それぞれの立場からの問題や今後の改善策について話し合いました。
第3部の総括では加藤氏がモデレーターとなり、ワークショップの各グループの代表者がそれぞれの討議内容を発表しました。発表では、何のための研究か出口戦略の明確化や産官学の人材交流・人材流動の必要性、論文至上主義になりがちなアカデミアの評価基準の問題点などについて意見が出ました。
5時間に及んだシンポジウムは、PhRMA在日執行委員会委員長パトリック・ジョンソンによる閉会挨拶とともに幕を閉じました。
本シンポジウムの参加者からは「ワークショップは、産官学の異なる立場のメンバーが交流を持つことができる非常に稀な機会で有意義だった。」「各立場での重要点が述べられ、普段知りえない内容を勉強できた。」「現状の課題が明確になり、為になった。まさに、TR研究はこれからであると感じた。」などのコメントが寄せられました。
アンケートを通し、講演内容と今後取り上げるべきテーマについて、様々なご意見・ご感想が寄せられました。