ヤング・サイエンティスト・シンポジウム -Young Scientists Symposium 2015-

Young Scientist Symposiumヤング・サイエンティスト・シンポジウム

ヤング・サイエンティスト・シンポジウム

ヤング・サイエンティスト・シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施するものです。
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ヤング・サイエンティスト・シンポジウム > ホーム
第7回ヤング・サイエンティスト・シンポジウムは終了しました。ご参加ありがとうございました。

主催

国立大学法人 筑波大学、米国研究製薬工業協会(PhRMA)

後援

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)、日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)

プログラム

特別プログラム 9:00~ 「Pfizer 3D(Drug Discovery & Development)」
※希望者のみ定員32名

ファイザー株式会社によるゲーム感覚でスクリーニングから上市までの研究開発プロセスを学ぶ体験型研修プログラム。 ※1グループ8名に分かれて行います
開会挨拶 14:00~ 野中 健史
米国研究製薬工業協会(PhRMA) S&Rリーダーシップ委員会 委員長
ヤンセンファーマ株式会社 取締役 研究開発本部長
第1部 14:05~ 【モデレーター】
山田 雅信
筑波大学 つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO) 研究開発マネジメント部長、医学医療系 教授
講演1

バイオベンチャーが抱える資金調達の課題と投資家との対話のあり方について

北角 理麻
経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 課長補佐(ライフ企画担当)

講演2

コイノボリ:ミトコンドリア病患者家族による創薬活動

渕上  欣司
一般社団法人こいのぼり創業者・理事
富士見ベンチャー・パートナーズ株式会社代表取締役
Mitsui & Co. Global Investment, Inc. Venture Partner (業務委託)

講演3

免疫難病の克服を目指した基礎研究から創薬開発研究へ

渋谷 彰
筑波大学生存ダイナミクス研究センター教授
筑波大学革新的創薬開発研究センターセンター長
TNAX Biopharma 株式会社 CSO

講演4

J&Jにおけるヘルスケアエコシステム構築への取り組み

楠 淳
Director, New Ventures Japan, Asia Pacific Innovation Center, Johnson & Johnson INNOVATION

第2部 16:30~
プレゼンテーション

医療アントレプレナー育成プログラムResearch Studio:国内展開と国際連携 

荒川 義弘
筑波大学 つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO) 機構長、附属病院 病院長補佐、医学医療系 教授

“Revolutionizing the Way We Treat Heart Failure”
- 心不全治療に、革命を起こす

菅 愛子
株式会社メトセラ 経営企画部 マネージャー

パネルディスカッション

【モデレーター】
荒川 義弘
筑波大学 つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO) 機構長、附属病院 病院長補佐、医学医療系 教授

【パネリスト】
北角 理麻
経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 課長補佐(ライフ企画担当)
渕上  欣司
一般社団法人こいのぼり創業者・理事
富士見ベンチャー・パートナーズ株式会社代表取締役
Mitsui & Co. Global Investment, Inc. Venture Partner (業務委託)

渋谷 彰
筑波大学生存ダイナミクス研究センター教授
筑波大学革新的創薬開発研究センターセンター長
TNAX Biopharma 株式会社 CSO

楠 淳
Director, New Ventures Japan, Asia Pacific Innovation Center, Johnson & Johnson INNOVATION
桑原 宏哉
厚生労働省 医政局 研究開発振興課治験推進室 室長補佐、経済課(併任)
高橋 俊一
バイエル薬品株式会社 オープンイノベーションセンター センター長

閉会挨拶 17:55~ 荒川 義弘
筑波大学 つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO) 機構長、附属病院 病院長補佐、医学医療系 教授

※プログラム、登壇者、講演タイトル及び内容などは都合により予告無く変更する場合がございます。

※シンポジウム終了後、別会場にて懇親会を開催します。

お問い合わせ先

第7回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム事務局(株式会社ジャパン・カウンセラーズ内)
TEL:03-3291-0118 MAIL:yss@jc-inc.co.jp

ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >演者略歴

第1部講演

モデレーター

山田 雅信
国立大学法人筑波大学
つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)研究開発マネジメント部長、医学医療系 教授
<略歴>
1985年3月
東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了
1985年4月
厚生省入省 以後、新薬承認審査業務などの医薬行政を中心とした業務を担当
2001年4月
厚生労働省 医薬局審査管理課長補佐
2003年10月
医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構 研究振興部基礎研究推進課長
2005年4月
厚生労働省 医薬食品局安全対策課安全使用推進室長
2008年7月
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 新薬審査第一部長
2011年8月
厚生労働省 医政局研究開発振興課治験推進室長
2013年7月
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審議役(国際・新薬審査等担当)
2015年10月
厚生労働省 医薬・生活衛生局審査管理課長
2017年10月~
現職

講演1:講師

北角 理麻
経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 課長補佐
<略歴>
2011年3月
東京理科大学 理工学部 応用生物科学課 卒業
2013年3月
東京大学大学院 農学生命科学研究科 卒業
2013年4月
オーソクリニカル・ダイアグノスティックス株式会社
2016年1月
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
2018年4月
経済産業省 生物化学産業課

講演2:講師

渕上 欣司
一般社団法人こいのぼり創業者・理事
富士見ベンチャー・パートナーズ株式会社代表取締役
Mitsui & Co. Global Investment, Inc. Venture Partner (業務委託)
<略歴>
1992年3月
大阪大学大学院 医学部医科学研究科修了
1992年4月
バイエル薬品株式会社 中央研究所
2004年1月
株式会社インシリコサイエンス代表取締役
2004年12月~
Mitsui & Co. Global Investment Venture Partner, Inc. (現在、業務委託)
2013年~
一般社団法人こいのぼり創業者・理事
2019年7月~
富士見ベンチャー・パートナーズ株式会社代表取締役

講演3:講師

渋谷 彰
筑波大学生存ダイナミクス研究センター教授
筑波大学革新的創薬開発研究センターセンター長
TNAX Biopharma 株式会社 CSO
<略歴>
1981年3月
北海道大学医学部卒業
1981年4月
社会福祉法人三井記念病院医員内科
1985年2月
筑波大学附属病院医員内科
1989年4月
筑波大学講師 (臨床医学系血液内科)
1993年4月
DNAX分子細胞生物学研究所研究員(アメリカ合衆国)
1996年8月
岡山大学講師(医学部)
1998年4月
筑波大学助教授(基礎医学系)
2001年9月
理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センター・
チームデイレクター(兼任)(~2004年3月)
2003年4月~現在
筑波大学教授
(基礎医学系、人間総合科学研究科、生存ダイナミクス研究センター(TARA)等)
2012年4月~現在
筑波大学グローバル教育院
ヒューマンバイオロジー学位プログラムリーダー(リーディング大学院)
2018年3月~現在
TNAX Biopharma 株式会社創業(CSO)
2019年10月~現在
筑波大学革新的創薬開発研究センターセンター長

講演4:講師

楠 淳
Director, New Ventures Japan, Asia Pacific Innovation Center, Johnson & Johnson INNOVATION
<略歴>
1988年3月
星薬科大学大学院薬学研究科博士前期課程修了
1988年4月~2001年3月
富士レビオ㈱医薬研究所
1990年4月~1991年10月
千葉大学医学部第二内科 脂質代謝研究室出向
1997年12月~2001年1月
米国マウントサイナイ医科大学 心血管研究所出向
1998年9月
薬学博士(論博)星薬科大学
2001年4月~2008年7月
万有製薬㈱ つくば研究所
2001年4月~2002年9月
生物医学研究所 主任研究員
2002年10月~2004年3月
プロジェクトチームリード(課長)
2004年4月~2006年3月
代謝性疾患領域研究部 脂質代謝研究グループリーダー(マネージャ-)
2006年4月~2008年7月
同上、脂質・栄養代謝研究グループリーダー(ディレクター)
2008年8月~2011年3月
リリーシンガポール創薬研究センター(株)
糖尿病創薬研究部門 部門長(ディレクター)
2011年4月~2014年7月
日本イーライリリー(株) 医学科学本部
2011年4月~2012年12月
糖尿病領域シニアクリニカルリサーチサイエンティスト
2013年1月~2014年7月
糖尿病領域メディカルリエゾングループリード(部長)
2014年8月~
現職

第2部プレゼンテーション・パネルディスカッション

モデレーター・プレゼンター

荒川 義弘
筑波大学つくば臨床医学研究開発機構機構長、医学医療系教授、附属病院病院長補佐
<略歴>
1981年3月
東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了
1981年4月
エーザイ株式会社:脳神経領域の医薬品探索研究に従事
1988年~1990年
マックスプランク精神医学研究所研究員
1996年8月
東京大学医学部助教授・附属病院分院薬剤部長
2001年10月
同医学部附属病院臨床試験部副部長
2010年4月
同医学部附属病院臨床研究支援センター副センター長、
早期・探索開発推進室副室長(兼)
2012年7月
同病院教授
2015年4月
筑波大学医学医療系教授、附属病院病院長補佐
2015年6月
筑波大学附属病院つくば臨床医学研究開発機構 機構長

プレゼンター

菅 愛子
株式会社メトセラ 経営企画部 マネージャー
<略歴>
2007年3月
千葉大学大学院 医学薬学府 総合薬品科学科 修了
2007年4月~2018年3月
中外製薬株式会社
2017年3月
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 修了
2018年4月~
株式会社メトセラ

パネリスト

桑原 宏哉
厚生労働省 医政局 研究開発振興課治験推進室 室長補佐、経済課(併任)
<略歴>
2002年3月
東京医科歯科大学医学部医学科 卒業
2002年4月
虎の門病院 内科病棟医
2004年4月
東京医科歯科大学医学部附属病院 神経内科医員
2005年6月
横須賀共済病院 神経内科医員(2007年5月まで)
2007年6月
東京医科歯科大学医学部附属病院 神経内科医員(2008年3月まで)
2007年4月
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学 大学院生(博士課程)
2011年4月
東京医科歯科大学医学部附属病院 神経内科医員
2011年6月
東京都立墨東病院 内科(神経内科)医員
2013年4月
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学 特任助教
2018年4月
厚生労働省 医政局 研究開発振興課 治験推進室長補佐(経済課併任)

パネリスト

高橋 俊一
バイエル薬品株式会社 オープンイノベーションセンター センター長
<略歴>
1996年4月
三井製薬工業株式会社入社 探索創薬研究室
2001年1月
日本シエーリング株式会社入社 (合併による) 循環器研究チーム
2001年10月
ドイツシエーリング社傘下 米国バーレックスバイオサイエンス出向 循環器研究部
2007年3月
日本シエーリング株式会社 リサーチセンター 幹細胞機能制御 主幹研究員
2007年7月
バイエル薬品株式会社入社 (合併による) 神戸リサーチセンター
再生医療研究本部幹細胞創薬部 主幹研究員
2008年10月
同社 開発本部 プロジェクトマネジメント 循環器領域プロジェクトリーダー
2012年1月
同社 開発本部 プロジェクトマネジメント 循環器領域マネジャー
2013年2月
同社 メディカルアフェアーズ本部 メディカルアフェアーズプライマリーケア  部長
2014年6月~
同社 オープンイノベーションセンター センター長

パネリスト(第一部より)

北角 理麻、渕上 欣司、渋谷 彰、楠 淳

ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >講演内容

講演1

北角 理麻
経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 課長補佐(ライフ企画担当)

バイオベンチャーが抱える資金調達の課題と投資家との対話のあり方について

創薬型ベンチャーが医薬品を上市し成功するためには研究開発を支える資金調達が重要です。これまでも、創薬型ベンチャーの資金調達面の課題が議論されていますが、その多くは上場前の資金調達環境の改善が主眼となっていました。
他方で、成功例が次々と創出される米国の創薬型ベンチャーの資金調達環境をみると、上場後も1社平均10年間の赤字期間が継続しているものの、1社平均350 億円程度を株式市場(機関投資家が中心)から調達し成長しています。
日本に目を転じると、新興市場に上場後の創薬型ベンチャーの時価総額は、欧米のみならず、中国・韓国よりも小さい状況です。上場後も研究開発投資が先行し、売上や利益が早期に計上されない中で、機関投資家による評価が困難であることを1つの要因として、柔軟かつ機動的な資金調達ができない状況にあります。
経済産業省は、グローバルに活躍するバイオベンチャーの創出を通じて、いち早く世界中の患者の皆様に治療法を届けることを目的とし、2017年11月に「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会」を立ち上げました。(1)創薬型ベンチャーと投資家の価値協創ガイダンス策定、(2)創薬・バイオをはじめとする研究開発投資先行型企業の視点からみた新興市場の課題整理、に向けて検討を行った結果として、伊藤レポート2.0「バイオメディカル産業版」をまとめました。本報告書でとりまとめた新興市場の現状、課題と今後の方向性を紹介いたします。

講演2

渕上  欣司
一般社団法人こいのぼり創業者・理事
富士見ベンチャー・パートナーズ株式会社代表取締役
Mitsui & Co. Global Investment, Inc. Venture Partner (業務委託)

コイノボリ:ミトコンドリア病患者家族による創薬活動

「一日も早く、患者さんに、治療を届けたい!」そのような理念を掲げるバイオテクは多い。いささかお決まりの文句の様に感じることもある。一方で、難病が自分自身・家族の自分事であったら、居ても立っても居られない。今すぐ何とかしたい危急課題なのだ。一般社団法人コイノボリはそんな思いの基に設立された民間非営利組織で、医師・バイオ系VC・製薬・研究者など専門家とミトコンドリア病患者家族らからなるユニークなプロボノ集団。設立以来10年活動してきた。

ミトコンドリアは、体中に約12京個あり、全身のエネルギーをつくる代謝の中心器官。ミトコンドリア病は、核とミトコンドリアDNAの異常によりミトコンドリアに障害が発生する疾患。種類は60種類以上あり、5,000人に1人発生すると言われる。症状は、全身にみられ、エネルギー消費の高い脳や筋肉への障害が起きやすく、目、耳、心臓、肝臓、消化管、腎臓、内分泌(甲状腺や膵臓)、血液などの臓器にも障害が生じる。現状ミトコンドリア病には、これまで有効な治療法がほとんどなく、多くの悲しみを生んできた。特に乳児で発症するミトコンドリア病は重く、長くは生きられない。

コイノボリはミトコンドリア病克服のために下記のような活動を行っている。

  1. ミトコンドリア脳筋症(MELAS)の治療薬の開発支援。独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)での臨床研究のための事業開発を支援。結果、MELASを対象としたEPI-743の早期探索的臨床試験(UMIN000010783)を実現。臨床研究に掛かる費用の一部を負担。
  2. 7SP Cell Bank: 患者由来細胞を用いた研究のため、細胞の作製、保管、研究提供。クラウドファンディングにより、目標金額の3倍を超える寄附を得て、資金的研究支援。
  3. 研究成果に基づくベンチャー創出。

本講演では、コイノボリの活動を紹介しながら、将来を担う若手研究者の皆さんにご自身のObjectives & Key Results (OKR)を見出す手掛かりにしていただきたい。

講演3

渋谷 彰
筑波大学生存ダイナミクス研究センター教授
筑波大学革新的創薬開発研究センターセンター長
TNAX Biopharma 株式会社 CSO

免疫難病の克服を目指した基礎研究から創薬開発研究へ

 科学の発展と応用には、現象の本質を解明することが必須である。“疫病から免れる”という意味を語源とする免疫の本質は、病原体のみならず自分以外のすべてのものを非自己として識別し、自己から非自己を排除する生体防御システムであるということが明らかになった。免疫は感染症ばかりでなく、アレルギー抗原、がん抗原、移植臓器なども非自己として認識し、これらによる疾患に関与し、また自己と非自己の識別機構に異常が生じれば、自己を攻撃する様々な自己免疫病の発症にも関与する。さらに現在では、免疫はほとんど全ての臓器、組織の炎症とその修復に深く関与することも明らかとなった。
 我々は、免疫反応を担う多種多様な免疫細胞の細胞膜上に発現し、免疫反応の起点となる免疫受容体に焦点を絞った研究を行ってきた。1996年、がん細胞やウイルス感染細胞を殺すキラーリンパ球の働きに重要な役割を担う免疫受容体としてDNAM-1を発見し、その後の研究によって、DNAM-1ががんの発症を抑制することを証明した。この研究成果は、1960年のノーベル医学生理学賞を受賞したバーネット博士の「がん免疫監視説」の実体を初めて証明し、その分子機構を明らかにしたものである。2000年には、長い間、多くの研究者が探し求めていたIgM抗体の受容体としてFcα/μ受容体を発見し、その後の研究で、本受容体が肺炎球菌などの多糖類がついた抗原に対する免疫反応に関与することを明らかにした。さらに2003年には、MAIR-I, MAIR-IIを発見し、その後の研究で、これらが細菌感染による敗血症や炎症性腸疾患などを制御することを明らかにした。また2010年には、アラジン-1を発見し、すべてのアレルギー性疾患の発症メカニズムに共通である「肥満細胞からのヒスタミンなどの化学物質の放出」を強力に抑制することを見出した。
 本講演では、我々のこれまでの免疫制御の基礎研究から、創薬開発に向けた研究について紹介する。

講演4

楠 淳
Director, New Ventures Japan, Asia Pacific Innovation Center, Johnson & Johnson INNOVATION

J&Jにおけるヘルスケアエコシステム構築への取り組み

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、世界60カ国以上に250以上のグループ企業を有し、総従業員数約127,000名を擁する「世界最大級のヘルスケアカンパニー」であり、消費者向け製品、医療機器ならびに医薬品の分野で、多くの製品を世界に供給している。J&Jでは「リソース、アイディアならびに技術を新しい形で結び付けることの出来る人材からなる強力なネットワークを構築すること」を「J&Jにおけるオープン・イノベーション」と定義し、これを担うプラットフォームとして、J&J Innovation (JJI)を設立した(www.jnjinnovation.com)。
 JJIは、Innovation Centers (IC)、JLABS、Janssen Business Development (JBD)、J&J Development Corporation (JJDC)の4つの部門からなる。特にICとJLABSは、J&Jにおけるオープンイノベーションの中核を担い、スタートアップ支援については、JLABSが主要な役割を担っている。
 JLABSは、J&Jのフォーカスするヘルスケア分野(医薬品、医療機器、消費者向け製品)における、スタートアップ企業育成のためのインキュベーター施設で、これまで北米を中心に世界で11か所のJLABSを展開している。JLABSは、起業したてのスタートアップ企業に対して、極力初期投資を抑えて独自技術の研究開発に専念できる環境を提供し、一定期間内にバイオベンチャー企業として成長し卒業させることで、ヘルスケア分野におけるエコシステム構築に寄与することを目的としている。現在、卒業企業を含めてJLABS companyは累計約600企業となり、半数以上が製薬分野、1/4弱が医療機器分野のベンチャー企業から構成される。
 本講演では、ICとJLABSを核としたJ&Jのオープンイノベーションモデルならびにヘルスケアエコシステム構築への取り組みについて概説する。

プレゼンテーション1

荒川 義弘
筑波大学つくば臨床医学研究開発機構 機構長
医学医療系 教授
附属病院 病院長補佐

医療アントレプレナー育成プログラムResearch Studio powered by SPARK:国内展開と国際連携

 新薬の多くが米国発であり、7割がバイオベンチャー/アカデミアに由来するという。米国ではいわゆる死の谷を乗り越える手段としてバイオベンチャーが位置付けられ、開発を加速させている。日本でも出口戦略を検討する上で、国際展開は初めから考慮すべきことであり、First-in-Human試験以降は最適な国から開発を進め、早期に技術移転を図るべきである。この枠組を進めるためには、公的資金で核となる研究データを得た後は、早期に起業しVenture Capitalから資金導入を行って開発を加速させることが求められる。Research Studioでは、選抜チームに対して標的製品プロファイルを基にした開発戦略と国際展開を視野に入れたビジネスモデルの策定をトップリーダーによるメンタリングにより指導している。さらには、SPARK StanfordやUCSDを始めとする海外拠点との連携を活用して、国際展開が実践的に図れるようにしている。一方、国内では、AMEDの支援を得て他拠点大学(慶應、京都、大阪、岡山、九州)への展開を図っているところである。これらを進めていく上での最も大きなチャレンジは、研究者のスタートアップ挑戦へのマインドセットの変換とスタートアップを育むエコシステムの醸成であり、様々の取り組みを展開していきたい。

プレゼンテーション2

菅 愛子
株式会社メトセラ 経営企画部 マネージャー

“Revolutionizing the Way We Treat Heart Failure”
- 心不全治療に、革命を起こす

 メトセラは細胞医薬品VCFにより慢性心不全に新規治療法を提供するため研究開発を行っています。これまで、VCFは優れた心組織再生効果を示し、動物試験において心機能改善が確認されています。現在は、治験実施に向け、事業化を推進している段階です。
Research Studio 2018 by Sparkへの参加目的の一つは海外展開を見据えた戦略の精緻化でした。半年にわたるプログラムで、VCF上市に至る臨床計画・事業戦略を医師とともに検討し、現在の経営計画へと反映することができました。

ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」とは

「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」とは

2013年から「ヤング・サイエンティスト・プログラム」の一環として米国研究製薬工業協会(PhRMA)の支援のもと、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団(本部:米国ワシントンDC)とともに実施している、グローバルに活躍する人材育成を目的とした米国研修プログラムです。本年9月の実施で、第7回目を迎えます。

具体的には、医薬に携わる日本の若手研究者を米国に短期間派遣し、米国におけるトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品研究、規制慣行について知見を広げ、この経験をもとに新たなシーズ創出へと活かす機会を提供しています。

派遣される日本の医療・医薬品研究分野に携わる研究者の方々は、ワシントンDC、フィラデルフィアおよびボストン等において、米国政府の医療政策部署、シンクタンク、医薬品研究部門、民間製薬会社、大学等における関係者が、それぞれ新薬開発から製品化に至るまでの過程でどのように連携しているかを含め、米国のトランスレーショナルリサーチや医療エコシステムの実情を幅広く学ぶ機会を得ています。

※2018年9月訪米中の様子

今回のシンポジウムでも、企画段階から「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」参加経験者の皆様にご協力を頂きました。

プログラム詳細、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団に関しましては、下記リンクからもご参照頂けます
The Maureen and Mike Mansfield Foundation

ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >レポート

PhRMAは去る2019年11月16日、国立大学法人筑波大学 東京キャンパスにおいて、国内の産官学の若手研究者たちを対象に、「第7回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム」と題した研究会を国立大学法人筑波大学と共催で開催しました。

同シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施しているものです。創薬分野における若手研究者の果たすべき役割の重要性をグローバルな視点で再認識してもらうこと、研究意欲のさらなる向上、創薬分野で世界的に活躍できる人材を育成することを目的としています。

第7回目となる今回のシンポジウムは、開催当初からの「産・官・学それぞれの視点から若手研究者にトランスレーショナルリサーチ(TR)の重要性を伝える」という基本路線を踏襲し、研究資金獲得をメインテーマに、支援を受けるアカデミアや、支援する側である企業やベンチャーキャピタル、規制・政策の枠組みや環境整備を行う規制当局など様々な立場から講演をいただきました。また共催の筑波大学が行っている医療アントレプレナー育成プログラム「Research Studio powered by SPARK」の紹介や、「出口戦略に向けたハードルとは」「スタートアップ育成上の課題・挑戦」をテーマにパネルディスカッションも行いました。

当日の午前中には、別会場にて希望者のみを対象としたファイザー株式会社による特別プログラム「Pfizer3D」を実施しました。こちらは、実際にファイザー株式会社の新人教育で取り入れられている、ゲーム感覚でスクリーニングから上市までの研究開発プロセスを学ぶ体験型研修プログラムで、参加者は2チームに分かれ、糖尿病治療薬を例に、各プロセスの担当者として、シーズ決定や安全性・薬物動態の確認・臨床試験・承認までにおける各フェーズでの決定事項についてそれぞれの視点からディスカッションを行いました。

午後のシンポジウム本編は、野中 健史 PhRMA S&Rリーダーシップ委員会委員長の開会挨拶から始まり、筑波大学つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)研究開発マネジメント部長の山田 雅信氏がモデレーターとなり、第1部の講演会を行いました。

初めに行政の立場から経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 課長補佐の北角 理麻氏が「バイオベンチャーが抱える資金調達の課題と投資家との対話のあり方について」と題し、日本のバイオベンチャーが成長するための資金調達環境の改善に必要なベンチャーと投資家をつなぐ仕組みづくりについて紹介しました。
続いて患者団体・ベンチャーキャピタルの双方の立場から一般社団法人こいのぼり創業者・理事で、富士見ベンチャー・パートナーズ株式会社代表取締役でもある渕上 欣司氏より「コイノボリ:ミトコンドリア病患者家族による創薬活動」と題し、希少疾患であるミトコンドリア病の患者家族による、治療薬開発支援のための資金調達、ベンチャーや研究事業への支援などの取り組みを紹介しました。
続いて筑波大学生存ダイナミクス研究センター教授の渋谷 彰氏より「免疫難病の克服を目指した基礎研究から創薬開発研究へ」と題して、実際に免疫受容体に焦点を絞った基礎研究を通してアレルギー性疾患の創薬開発に向けた研究について講演を行いました。
最後にJohnson & Johnson INNOVATION Asia Pacific Innovation Center New Ventures Japan Directorの 楠 淳氏より「J&Jにおけるヘルスケアエコシステム構築への取り組み」と題し、ジョンソンエンドジョンソンで実際に行っているオープンイノベーションモデルならびにヘルスケアエコシステム構築への取り組みについて概説しました。

第2部はまず、筑波大学つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)が行っている医療アントレプレナー育成プログラム「Research Studio Powered by SPARK」の紹介を筑波大学つくば臨床医学研究開発機構 機構長の荒川 義弘氏が行い、2018年にResearch Studioを受講した株式会社メトセラ 経営企画部マネージャー 菅 愛子氏よりResearch Studioの参加を通して自身のバイオベンチャーでどのように経営計画へ反映したかなど、体験談を交えて紹介しました。
パネルディスカッションでは、荒川 義弘氏がモデレーターを務め、第1部の登壇者である北角氏、渕上氏、渋谷氏、楠氏に加え、厚生労働省 医政局 研究開発振興課治験推進室 室長補佐の桑原 宏哉氏、バイエル薬品株式会社 オープンイノベーションセンター センター長の高橋 俊一氏がパネリストとして登壇し、「出口戦略に向けたハードルとは」「スタートアップ育成上の課題・挑戦」をテーマにそれぞれの視点からディスカッションを行いました。

4時間に及んだシンポジウムは、荒川氏による閉会挨拶とともに幕を閉じました。

本シンポジウムの参加者からは「Start upエコシステムに関する様々な課題について整理ができました。」「上場や資金調達の経済面の課題は重要であり、状況をよく理解できました。」などのコメントが寄せられました。

【シンポジウムの模様】

■特別プログラム「Pfizer 3D」

■シンポジウム

■登壇者


野中 健史
米国研究製薬工業協会(PhRMA)
S&Rリーダーシップ委員会 委員長
ヤンセンファーマ株式会社 取締役
研究開発本部長

山田 雅信
筑波大学
つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)
研究開発マネジメント部長

北角 理麻
経済産業省
商務・サービスグループ
生物化学産業課 課長補佐

渕上 欣司
一般社団法人こいのぼり創業者・理事
富士見ベンチャー・パートナーズ株式会社
代表取締役
Mitsui & Co. Global Investment,
Inc. Venture Partner (業務委託)

渋谷 彰
筑波大学生存ダイナミクス研究センター教授
筑波大学革新的創薬開発研究センターセンター長
TNAX Biopharma 株式会社 CSO

楠 淳
Johnson & Johnson INNOVATION、
Asia Pacific Innovation Center、
New Ventures Japan Director

荒川 義弘
筑波大学つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)
機構長
附属病院 病院長補佐
医学医療系 教授

菅 愛子
株式会社メトセラ 経営企画部
マネージャー

桑原 宏哉
厚生労働省
医政局 研究開発振興課治験推進室
室長補佐
経済課(併任)

高橋 俊一
バイエル薬品株式会社
オープンイノベーションセンター
センター長
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■『第6回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
日本のアカデミアシーズを世界へ
― 事例に学ぶ産学連携 ―

日時:
2018年11月17日(土)
特別プログラム9:00~ 第1部14:05~ 第2部16:40~
会場:
午前:大手町ファーストスクエアカンファレンス RoomD
午後:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 20階 201会議室
主催:
米国研究製薬工業協会(PhRMA)
後援:



国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)、日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)

■『第5回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
~がん治療薬開発に必要なBio-infrastructure とは~

日時:
2017年11月26日(日)
第1部13:00~14:40 第2部14:55~16:15 第3部16:30~18:00
会場:
国立がん研究センター 築地キャンパス 新研究棟 大会議室・セミナーA/B
主催:
国立がん研究センター・同中央病院「日本医療研究開発機構医療技術実用化総合促進事業」・米国研究製薬工業協会(PhRMA)
後援:



厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)、
日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)

■『第4回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
あなたの研究が世界を変える
~基礎と臨床の架け橋 トランスレーショナルリサーチの未来~

日時:
2016年12月1日(木) 第1部11:55~12:45 第2部18:15~20:15
会場:
パシフィコ横浜 会議センター
主催:
第39回日本分子生物学会年会・米国研究製薬工業協会(PhRMA)共催
後援:



厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)、
日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、
一般財団法人バイオインダストリー協会

■『第3回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
トランスレーショナルリサーチの実践
~産官学 若手研究者がリーダーシップを発揮する時~

日時:
2015年12月10日(木) 9:00~14:30
会場:
京王プラザホテル
主催:
第36回日本臨床薬理学会学術総会・米国研究製薬工業協会(PhRMA)共催
後援:


厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)、
日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)

■『第2回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
飛躍するトランスレーショナルリサーチ
~若手研究者の成長と、産官学の連携を目指して~

日時:
2015年1月24日(土) 14:00~19:00
会場:
フクラシア東京ステーション
主催:
国立大学法人千葉大学・米国研究製薬工業協会(PhRMA)共催
後援:


独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、厚生労働省、文部科学省

■『第1回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
グローバル時代の創薬オープン・イノベーション
産・官・学それぞれの若手研究者への期待

日時:
2013年8月31日(土) 13:00~17:30
会場:
東京大学本郷キャンパス「伊藤謝恩ホール」
主催:
東京大学・米国研究製薬工業協会(PhRMA)
 
日本製薬工業協会、欧州製薬団体連合会(EFPIA)
後援:
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
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