ヤング・サイエンティスト・シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施するものです。
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国立大学法人 筑波大学、米国研究製薬工業協会(PhRMA)
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)、日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)
特別プログラム | 9:00~ | 「Pfizer 3D(Drug Discovery & Development)」 ※希望者のみ定員32名 ファイザー株式会社によるゲーム感覚でスクリーニングから上市までの研究開発プロセスを学ぶ体験型研修プログラム。 ※1グループ8名に分かれて行います |
開会挨拶 | 14:00~ | 野中 健史 米国研究製薬工業協会(PhRMA) S&Rリーダーシップ委員会 委員長 ヤンセンファーマ株式会社 取締役 研究開発本部長 |
第1部 | 14:05~ | 【モデレーター】 山田 雅信 筑波大学 つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO) 研究開発マネジメント部長、医学医療系 教授 講演1
バイオベンチャーが抱える資金調達の課題と投資家との対話のあり方について 北角 理麻 講演2
渕上 欣司 講演3
渋谷 彰 講演4
楠 淳 |
第2部 | 16:30~ | プレゼンテーション
医療アントレプレナー育成プログラムResearch Studio:国内展開と国際連携 荒川 義弘 “Revolutionizing the Way We Treat Heart Failure” 菅 愛子 パネルディスカッション
【モデレーター】 |
閉会挨拶 | 17:55~ | 荒川 義弘 筑波大学 つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO) 機構長、附属病院 病院長補佐、医学医療系 教授 ※プログラム、登壇者、講演タイトル及び内容などは都合により予告無く変更する場合がございます。 |
※シンポジウム終了後、別会場にて懇親会を開催します。
第7回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム事務局(株式会社ジャパン・カウンセラーズ内)
TEL:03-3291-0118 MAIL:yss@jc-inc.co.jp
モデレーター
講演1:講師
講演2:講師
講演3:講師
講演4:講師
モデレーター・プレゼンター
プレゼンター
パネリスト
パネリスト
パネリスト(第一部より)
北角 理麻、渕上 欣司、渋谷 彰、楠 淳
バイオベンチャーが抱える資金調達の課題と投資家との対話のあり方について
創薬型ベンチャーが医薬品を上市し成功するためには研究開発を支える資金調達が重要です。これまでも、創薬型ベンチャーの資金調達面の課題が議論されていますが、その多くは上場前の資金調達環境の改善が主眼となっていました。
他方で、成功例が次々と創出される米国の創薬型ベンチャーの資金調達環境をみると、上場後も1社平均10年間の赤字期間が継続しているものの、1社平均350 億円程度を株式市場(機関投資家が中心)から調達し成長しています。
日本に目を転じると、新興市場に上場後の創薬型ベンチャーの時価総額は、欧米のみならず、中国・韓国よりも小さい状況です。上場後も研究開発投資が先行し、売上や利益が早期に計上されない中で、機関投資家による評価が困難であることを1つの要因として、柔軟かつ機動的な資金調達ができない状況にあります。
経済産業省は、グローバルに活躍するバイオベンチャーの創出を通じて、いち早く世界中の患者の皆様に治療法を届けることを目的とし、2017年11月に「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会」を立ち上げました。(1)創薬型ベンチャーと投資家の価値協創ガイダンス策定、(2)創薬・バイオをはじめとする研究開発投資先行型企業の視点からみた新興市場の課題整理、に向けて検討を行った結果として、伊藤レポート2.0「バイオメディカル産業版」をまとめました。本報告書でとりまとめた新興市場の現状、課題と今後の方向性を紹介いたします。
コイノボリ:ミトコンドリア病患者家族による創薬活動
「一日も早く、患者さんに、治療を届けたい!」そのような理念を掲げるバイオテクは多い。いささかお決まりの文句の様に感じることもある。一方で、難病が自分自身・家族の自分事であったら、居ても立っても居られない。今すぐ何とかしたい危急課題なのだ。一般社団法人コイノボリはそんな思いの基に設立された民間非営利組織で、医師・バイオ系VC・製薬・研究者など専門家とミトコンドリア病患者家族らからなるユニークなプロボノ集団。設立以来10年活動してきた。
ミトコンドリアは、体中に約12京個あり、全身のエネルギーをつくる代謝の中心器官。ミトコンドリア病は、核とミトコンドリアDNAの異常によりミトコンドリアに障害が発生する疾患。種類は60種類以上あり、5,000人に1人発生すると言われる。症状は、全身にみられ、エネルギー消費の高い脳や筋肉への障害が起きやすく、目、耳、心臓、肝臓、消化管、腎臓、内分泌(甲状腺や膵臓)、血液などの臓器にも障害が生じる。現状ミトコンドリア病には、これまで有効な治療法がほとんどなく、多くの悲しみを生んできた。特に乳児で発症するミトコンドリア病は重く、長くは生きられない。
コイノボリはミトコンドリア病克服のために下記のような活動を行っている。
本講演では、コイノボリの活動を紹介しながら、将来を担う若手研究者の皆さんにご自身のObjectives & Key Results (OKR)を見出す手掛かりにしていただきたい。
免疫難病の克服を目指した基礎研究から創薬開発研究へ
科学の発展と応用には、現象の本質を解明することが必須である。“疫病から免れる”という意味を語源とする免疫の本質は、病原体のみならず自分以外のすべてのものを非自己として識別し、自己から非自己を排除する生体防御システムであるということが明らかになった。免疫は感染症ばかりでなく、アレルギー抗原、がん抗原、移植臓器なども非自己として認識し、これらによる疾患に関与し、また自己と非自己の識別機構に異常が生じれば、自己を攻撃する様々な自己免疫病の発症にも関与する。さらに現在では、免疫はほとんど全ての臓器、組織の炎症とその修復に深く関与することも明らかとなった。
我々は、免疫反応を担う多種多様な免疫細胞の細胞膜上に発現し、免疫反応の起点となる免疫受容体に焦点を絞った研究を行ってきた。1996年、がん細胞やウイルス感染細胞を殺すキラーリンパ球の働きに重要な役割を担う免疫受容体としてDNAM-1を発見し、その後の研究によって、DNAM-1ががんの発症を抑制することを証明した。この研究成果は、1960年のノーベル医学生理学賞を受賞したバーネット博士の「がん免疫監視説」の実体を初めて証明し、その分子機構を明らかにしたものである。2000年には、長い間、多くの研究者が探し求めていたIgM抗体の受容体としてFcα/μ受容体を発見し、その後の研究で、本受容体が肺炎球菌などの多糖類がついた抗原に対する免疫反応に関与することを明らかにした。さらに2003年には、MAIR-I, MAIR-IIを発見し、その後の研究で、これらが細菌感染による敗血症や炎症性腸疾患などを制御することを明らかにした。また2010年には、アラジン-1を発見し、すべてのアレルギー性疾患の発症メカニズムに共通である「肥満細胞からのヒスタミンなどの化学物質の放出」を強力に抑制することを見出した。
本講演では、我々のこれまでの免疫制御の基礎研究から、創薬開発に向けた研究について紹介する。
J&Jにおけるヘルスケアエコシステム構築への取り組み
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、世界60カ国以上に250以上のグループ企業を有し、総従業員数約127,000名を擁する「世界最大級のヘルスケアカンパニー」であり、消費者向け製品、医療機器ならびに医薬品の分野で、多くの製品を世界に供給している。J&Jでは「リソース、アイディアならびに技術を新しい形で結び付けることの出来る人材からなる強力なネットワークを構築すること」を「J&Jにおけるオープン・イノベーション」と定義し、これを担うプラットフォームとして、J&J Innovation (JJI)を設立した(www.jnjinnovation.com)。
JJIは、Innovation Centers (IC)、JLABS、Janssen Business Development (JBD)、J&J Development Corporation (JJDC)の4つの部門からなる。特にICとJLABSは、J&Jにおけるオープンイノベーションの中核を担い、スタートアップ支援については、JLABSが主要な役割を担っている。
JLABSは、J&Jのフォーカスするヘルスケア分野(医薬品、医療機器、消費者向け製品)における、スタートアップ企業育成のためのインキュベーター施設で、これまで北米を中心に世界で11か所のJLABSを展開している。JLABSは、起業したてのスタートアップ企業に対して、極力初期投資を抑えて独自技術の研究開発に専念できる環境を提供し、一定期間内にバイオベンチャー企業として成長し卒業させることで、ヘルスケア分野におけるエコシステム構築に寄与することを目的としている。現在、卒業企業を含めてJLABS companyは累計約600企業となり、半数以上が製薬分野、1/4弱が医療機器分野のベンチャー企業から構成される。
本講演では、ICとJLABSを核としたJ&Jのオープンイノベーションモデルならびにヘルスケアエコシステム構築への取り組みについて概説する。
医療アントレプレナー育成プログラムResearch Studio powered by SPARK:国内展開と国際連携
新薬の多くが米国発であり、7割がバイオベンチャー/アカデミアに由来するという。米国ではいわゆる死の谷を乗り越える手段としてバイオベンチャーが位置付けられ、開発を加速させている。日本でも出口戦略を検討する上で、国際展開は初めから考慮すべきことであり、First-in-Human試験以降は最適な国から開発を進め、早期に技術移転を図るべきである。この枠組を進めるためには、公的資金で核となる研究データを得た後は、早期に起業しVenture Capitalから資金導入を行って開発を加速させることが求められる。Research Studioでは、選抜チームに対して標的製品プロファイルを基にした開発戦略と国際展開を視野に入れたビジネスモデルの策定をトップリーダーによるメンタリングにより指導している。さらには、SPARK StanfordやUCSDを始めとする海外拠点との連携を活用して、国際展開が実践的に図れるようにしている。一方、国内では、AMEDの支援を得て他拠点大学(慶應、京都、大阪、岡山、九州)への展開を図っているところである。これらを進めていく上での最も大きなチャレンジは、研究者のスタートアップ挑戦へのマインドセットの変換とスタートアップを育むエコシステムの醸成であり、様々の取り組みを展開していきたい。
“Revolutionizing the Way We Treat Heart Failure”
- 心不全治療に、革命を起こす
メトセラは細胞医薬品VCFにより慢性心不全に新規治療法を提供するため研究開発を行っています。これまで、VCFは優れた心組織再生効果を示し、動物試験において心機能改善が確認されています。現在は、治験実施に向け、事業化を推進している段階です。
Research Studio 2018 by Sparkへの参加目的の一つは海外展開を見据えた戦略の精緻化でした。半年にわたるプログラムで、VCF上市に至る臨床計画・事業戦略を医師とともに検討し、現在の経営計画へと反映することができました。
2013年から「ヤング・サイエンティスト・プログラム」の一環として米国研究製薬工業協会(PhRMA)の支援のもと、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団(本部:米国ワシントンDC)とともに実施している、グローバルに活躍する人材育成を目的とした米国研修プログラムです。本年9月の実施で、第7回目を迎えます。
具体的には、医薬に携わる日本の若手研究者を米国に短期間派遣し、米国におけるトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品研究、規制慣行について知見を広げ、この経験をもとに新たなシーズ創出へと活かす機会を提供しています。
派遣される日本の医療・医薬品研究分野に携わる研究者の方々は、ワシントンDC、フィラデルフィアおよびボストン等において、米国政府の医療政策部署、シンクタンク、医薬品研究部門、民間製薬会社、大学等における関係者が、それぞれ新薬開発から製品化に至るまでの過程でどのように連携しているかを含め、米国のトランスレーショナルリサーチや医療エコシステムの実情を幅広く学ぶ機会を得ています。
今回のシンポジウムでも、企画段階から「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」参加経験者の皆様にご協力を頂きました。
プログラム詳細、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団に関しましては、下記リンクからもご参照頂けます
■The Maureen and Mike Mansfield Foundation
PhRMAは去る2019年11月16日、国立大学法人筑波大学 東京キャンパスにおいて、国内の産官学の若手研究者たちを対象に、「第7回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム」と題した研究会を国立大学法人筑波大学と共催で開催しました。
同シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施しているものです。創薬分野における若手研究者の果たすべき役割の重要性をグローバルな視点で再認識してもらうこと、研究意欲のさらなる向上、創薬分野で世界的に活躍できる人材を育成することを目的としています。
第7回目となる今回のシンポジウムは、開催当初からの「産・官・学それぞれの視点から若手研究者にトランスレーショナルリサーチ(TR)の重要性を伝える」という基本路線を踏襲し、研究資金獲得をメインテーマに、支援を受けるアカデミアや、支援する側である企業やベンチャーキャピタル、規制・政策の枠組みや環境整備を行う規制当局など様々な立場から講演をいただきました。また共催の筑波大学が行っている医療アントレプレナー育成プログラム「Research Studio powered by SPARK」の紹介や、「出口戦略に向けたハードルとは」「スタートアップ育成上の課題・挑戦」をテーマにパネルディスカッションも行いました。
当日の午前中には、別会場にて希望者のみを対象としたファイザー株式会社による特別プログラム「Pfizer3D」を実施しました。こちらは、実際にファイザー株式会社の新人教育で取り入れられている、ゲーム感覚でスクリーニングから上市までの研究開発プロセスを学ぶ体験型研修プログラムで、参加者は2チームに分かれ、糖尿病治療薬を例に、各プロセスの担当者として、シーズ決定や安全性・薬物動態の確認・臨床試験・承認までにおける各フェーズでの決定事項についてそれぞれの視点からディスカッションを行いました。
午後のシンポジウム本編は、野中 健史 PhRMA S&Rリーダーシップ委員会委員長の開会挨拶から始まり、筑波大学つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)研究開発マネジメント部長の山田 雅信氏がモデレーターとなり、第1部の講演会を行いました。
初めに行政の立場から経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 課長補佐の北角 理麻氏が「バイオベンチャーが抱える資金調達の課題と投資家との対話のあり方について」と題し、日本のバイオベンチャーが成長するための資金調達環境の改善に必要なベンチャーと投資家をつなぐ仕組みづくりについて紹介しました。
続いて患者団体・ベンチャーキャピタルの双方の立場から一般社団法人こいのぼり創業者・理事で、富士見ベンチャー・パートナーズ株式会社代表取締役でもある渕上 欣司氏より「コイノボリ:ミトコンドリア病患者家族による創薬活動」と題し、希少疾患であるミトコンドリア病の患者家族による、治療薬開発支援のための資金調達、ベンチャーや研究事業への支援などの取り組みを紹介しました。
続いて筑波大学生存ダイナミクス研究センター教授の渋谷 彰氏より「免疫難病の克服を目指した基礎研究から創薬開発研究へ」と題して、実際に免疫受容体に焦点を絞った基礎研究を通してアレルギー性疾患の創薬開発に向けた研究について講演を行いました。
最後にJohnson & Johnson INNOVATION Asia Pacific Innovation Center New Ventures Japan Directorの 楠 淳氏より「J&Jにおけるヘルスケアエコシステム構築への取り組み」と題し、ジョンソンエンドジョンソンで実際に行っているオープンイノベーションモデルならびにヘルスケアエコシステム構築への取り組みについて概説しました。
第2部はまず、筑波大学つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)が行っている医療アントレプレナー育成プログラム「Research Studio Powered by SPARK」の紹介を筑波大学つくば臨床医学研究開発機構 機構長の荒川 義弘氏が行い、2018年にResearch Studioを受講した株式会社メトセラ 経営企画部マネージャー 菅 愛子氏よりResearch Studioの参加を通して自身のバイオベンチャーでどのように経営計画へ反映したかなど、体験談を交えて紹介しました。
パネルディスカッションでは、荒川 義弘氏がモデレーターを務め、第1部の登壇者である北角氏、渕上氏、渋谷氏、楠氏に加え、厚生労働省 医政局 研究開発振興課治験推進室 室長補佐の桑原 宏哉氏、バイエル薬品株式会社 オープンイノベーションセンター センター長の高橋 俊一氏がパネリストとして登壇し、「出口戦略に向けたハードルとは」「スタートアップ育成上の課題・挑戦」をテーマにそれぞれの視点からディスカッションを行いました。
4時間に及んだシンポジウムは、荒川氏による閉会挨拶とともに幕を閉じました。
本シンポジウムの参加者からは「Start upエコシステムに関する様々な課題について整理ができました。」「上場や資金調達の経済面の課題は重要であり、状況をよく理解できました。」などのコメントが寄せられました。
【シンポジウムの模様】
■特別プログラム「Pfizer 3D」
■シンポジウム
■登壇者
■『第5回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
~がん治療薬開発に必要なBio-infrastructure とは~