米国研究製薬工業協会(PhRMA)
厚生労働省
経済産業省
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
日本製薬工業協会(JPMA)、 欧州製薬団体連合会(EFPIA)
湘南ヘルスイノベーションパーク
第1部:基調講演 | 14:00~ |
講演1
加藤 益弘 |
講演2
佐藤 陽次郎 |
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講演3
藤本 陽子 |
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第2部 | 16:00~ |
オンラインワークショップ
3つのグループに分かれてワークショップを実施します。 Aグループ:アカデミアや行政経験者に企業が期待すること 参加講師:加藤 益弘 (ミラバイオロジクス株式会社代表取締役社長) Bグループ:行政における経験がどうキャリアパスに活かされるのか 参加講師:佐藤 陽次郎 (ヤンセンファーマ株式会社 研究開発本部 薬事統括部長) Cグループ:女性研究者のキャリアパスについて考える 参加講師:藤本 陽子 (ファイザー株式会社 取締役 執行役員 ワクチン部門長) |
第3部: オンラインワークショップ 総括 |
16:40~ | 第2部のワークショップで各グループがディスカッションした内容をモデレーターが発表し、他のグループへその内容をシェアします。 |
PhRMA Translational Research Symposium運営事務局(株式会社ジャパン・カウンセラーズ内)
MAIL:yss@jc-inc.co.jp
第1部:講演1 講師
第1部:講演2 講師
第1部:講演3 講師
「世界で築くキャリアパスと創薬イノベーション」
今年の医療イノベーションの大きなエポックの一つは、mRNAコロナワクチンの出現であろう。2019年の末に、COVID-19が発生しパンデミックへと事態が悪化する中、非常に短期間でワクチンが開発されたことが、様々な波紋を広げた。特に日本では、なぜ日本でそれができなかったのかを問う声が上がった。
なぜModerna社やBioNTech/Pfizer社がこれほど早くCOVID-19ワクチンの開発ができたかを考えると、日米の差が浮かび上がる。ここでは、最重要と考える2点を指摘する。一つ目は、世の中の常識に囚われず、発明者のKatalin Kariko博士の成果(mRNAの免疫原性抑制)の価値・重要性を見抜けた人がいて、それをベンチャーで実践できたという環境。もう一つは、不確実性が高かったにもかかわらずFDAやPfizer社が、それぞれModerna社、BioNTech社への支援を決断し実行したこと。これらは、米国のバイオイノベーションのエコシステムの素晴らしさを物語っている。
昨今日本においても、当エコシステムの構築、拡大に向けて多くの施策が行われているし、成果は具体的な数字としても現れてきているし、日本にも興味深いベンチャーが出てきている。一方で、エコシステムの構築はまだまだ道半ばにも達していない。私もそうであったように、今までに様々な機会にヘルスイノベーションを如何に活発にするかが議論されてきた。ただし今回は、その話はしない。なぜならば、今私の話を聞いていただいている皆さんには、日本のシステムが米国並みになるのを待つ時間はないから、また、不十分な環境で頑張ってもらっても、それはシステムとして皆さんの能力を十分活用しきれないことになるから、である。
オリンピックがコロナ禍の状況下開催されたが、アスリートにとってその意義の一つは、自身の立ち位置を世界レベルで確認できることだと思う。皆さんは、優秀で意欲に燃えていると思うが、ぜひ、ご自身を世界最高の環境に置くことで立ち位置を確認し、ご自身の実力、さらには、とても大切な、自身のミッション・パッションに対する意識を伸ばして欲しい。世界最高峰のボストン・ケンブリッジ、シリコンバレー、等々に飛び出して、活躍の場を見出し、自らの力を試し、またその限界も知り、大きく羽ばたいてほしい。さらに、ケンブリッジや西海岸には、本当に多様な仕事をしている人々がいる。全員が、なんとかイノベーションを作り出し、それを実装化しようと主体的に考え、仕事を作り出し、大きなネットワークの中で動き回っている。このエネルギーレベルは、外からは決して実感できない。さらに、この中から、もしかしたら、自分によりあった専門や仕事も見つかるかもしれない。さらに重要なのは、最も重要なネットワークを築くことができる。個人的にはMBAに行くよりもよっぽど重要と確信している。
皆さんが世界に羽ばたき、世界水準を目指して、世界で活躍する人材となって欲しいと強く願います。
「飛躍と原点回帰~女性のキャリアにおいて重要な柔軟性」
私は臨床医としてキャリアをスタートしてから現在に至るまでに様々な機会と出会いました。神経内科として病院勤務の後、米国での免疫学の基礎研究を経て外資系製薬企業に入り、新薬の臨床開発に携わりました。その後メディカル・アフェアーズ部を経てワクチン部門に異動し、現在は新型コロナワクチンプロジェクトの総括リーダーも務めています。製薬企業の執行役員の一人としてビジネスに責任を持つ立場にありますが、臨床医として患者さんに向き合った経験や、基礎研究、製薬企業での臨床開発、海外留学や海外赴任からの学びが意思決定の基盤を形成していると思います。様々な経験により視野が広がり、それぞれの立場での思考を体験したことは、多種多様なステークホルダーの連携の上に成り立っている創薬活動や製薬企業での意思決定のための財産となりました。
このように多様な経験を積むことは、これからの方々に是非とも推奨したいと思いますが、重要なのは、最初からキャリアプランを立てることによってこれが実現するものではないという点です。私の場合も最初からキャリアプランがあったわけではなく、その時その時で与えられた任務を自分の信念に照らし合わせながら取り組んでいったに過ぎません。気がついてみると常に、1~3年前には予想していなかった仕事をしているという年月の積み重ねでした。「どんなポジションに就くか」よりも「どんな生き方をするか」が重要です。自分に与えられたものに真摯に組むことによって道は開けてくるものと思います。
この考えはライフイベントを大切にする女性としてのキャリア形成とうまく合致するように思います。出産し、母親として子育てをするというライフイベントも大変重要です。この部分は予見性が低くて不確実性が大きいので、もし最初からキャリアプランを描いていたら挫折の連続になってしまうかもしれません。「どのように生きたいか」という自分の信念を持った上で、時には大きな飛躍も受け入れる柔軟性が、女性のキャリアにとっては特に重要なのではないでしょうか。
2013年から「ヤング・サイエンティスト・プログラム」の一環として米国研究製薬工業協会(PhRMA)の支援のもと、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団(本部:米国ワシントンDC)とともに実施している、グローバルに活躍する人材育成を目的とした米国研修プログラムです。
具体的には、医薬に携わる日本の若手研究者を米国に短期間派遣し、米国におけるトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品研究、規制慣行について知見を広げ、この経験をもとに新たなシーズ創出へと活かす機会を提供しています。
派遣される日本の医療・医薬品研究分野に携わる研究者の方々は、ワシントンDC、フィラデルフィアおよびボストン等において、米国政府の医療政策部署、シンクタンク、医薬品研究部門、民間製薬会社、大学等における関係者が、それぞれ新薬開発から製品化に至るまでの過程でどのように連携しているかを含め、米国のトランスレーショナルリサーチや医療エコシステムの実情を幅広く学ぶ機会を得ています。
今回のシンポジウムの第2部モデレーターとして、「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」参加経験者の方々にご協力を頂きました。
PhRMAは、去る2021年12月4日(土)、「PhRMA Translational Research Symposium~多様なキャリア形成が創薬の未来を拓く~」と題したオンラインシンポジウムを開催しました。
PhRMAが主催する本シンポジウムは、産官学の立場で活躍する医薬における研究者が、人材交流・キャリアパスをテーマに、様々な視点からディスカッションすることで、参加者の研究意欲のさらなる向上、ひいては創薬分野で世界的に活躍できる人材を育成することを目的として実施しました。
当日は小野 嘉彦PhRMA在日技術委員会委員長の開会挨拶から始まり、大脇 健二PhRMA Translational Research Subcommittee代表がモデレーターとなり、第1部講演を行いました。
●第1部基調講演
まず初めに、企業とアカデミアにて創薬開発などのご経験を持つミラバイオロジクス株式会社代表取締役社長の加藤 益弘氏より、「世界で築くキャリアパスと創薬イノベーション」と題して、COVID-19ワクチン問題からの教訓を例に、信念をもって研究を継続することの重要性や、様々なキャリアを行き来する人材循環がバイオベンチャーの発展・興隆とベンチャー以外の活性化も起こしていくことに繋がること、日米の創薬環境、特にバイオベンチャーを取り巻く環境の比較などについてご紹介いただきました。またキャリアパスを考える上で、これまでのような組織に頼る時代は終わり、自らが世界に飛び出して、世界に通用する専門性と環境変化を乗り越える実力を身につけて世界の最先端を知ることが、今後の日本を担う研究者に必要であるとご説明いただきました。
続いて厚生労働省から企業へキャリアチェンジされたヤンセンファーマ株式会社 研究開発本部 薬事統括部長の佐藤 陽次郎氏より、「製薬を巡る研究開発の現状と今後の課題」と題して、公的研究費の現状やベンチャーキャピタルの現状、製薬会社の研究費の現状などをご紹介いただきました。
最後に臨床医やアカデミアを経て企業での臨床開発などのご経験を持つファイザー株式会社 取締役 執行役員 ワクチン部門長の藤本 陽子氏より「飛躍と原点回帰~女性のキャリアにおいて重要な柔軟性」と題して、女性が活躍することの重要性、女性のキャリアの課題と対処、ご自身のご経験をもとにしたキャリア事例をご紹介いただきました。女性活用やキャリアの議論は個人の自己実現とWell-beingを原点にすること、ジェンダーに対する固定概念を認識した上でポジティブに捉えること、キャリアに対する柔軟性が女性の活躍にとって重要であるとご説明いただきました。
●第2部ワークショップ
第2部のオンラインワークショップでは、参加者の関心のあるテーマで下記の3つのグループに分かれてワークショップを実施しました。第1部の講師と実際に産官学の垣根を超えたキャリア形成を実現した経験者や有識者がモデレーターとして各グループに加わり、今後のキャリアデザインを考えるにあたり、課題となっていることや体験談等について情報交換していただきました。
Aグループ:アカデミアや行政経験者に企業が期待すること
・モデレータ―:古澤 嘉彦(武田薬品工業株式会社 ジャパンメディカルオフィス メディカルエキスパート)
・参加講師:加藤 益弘(ミラバイオロジクス株式会社代表取締役社長)
Bグループ:行政における経験がどうキャリアパスに活かされるのか
・モデレーター:大槻 孝平(PMDA審査マネジメント部 イノベーション実用化支援・戦略相談課)
・参加講師:佐藤 陽次郎(ヤンセンファーマ株式会社 研究開発本部 薬事統括部長)
Cグループ:女性研究者のキャリアパスについて考える
・モデレーター:内山 麻希子(ヤンセンファーマ株式会社メディカルアフェアーズ本部 メディカルサイエンスリエゾン部)
・参加講師:藤本 陽子(ファイザー株式会社 取締役 執行役員 ワクチン部門長)
●第3部総括
第2部で話しあった内容を各グループのモデレーターの方々にご紹介いただきました。
Aグループでは武田薬品工業株式会社の古澤 嘉彦氏より、「日本におけるライフサイエンスのプレーヤーがどのようにシナジー効果を起こすか」をテーマに、企業とアカデミアが早期の段階からFace to Faceで話ができる人と人との繋がりが大切であること、アカデミアの先生方が早いうちからベンチャーを起業していくマインドセットを持つこと、企業側のベンチャーを支援していく仕組みづくりの重要性を改めて共通認識として議論したことをご紹介いただきました。
BグループではPMDAの大槻 孝平氏より、行政で得られる経験として企業やアカデミアのトップクラスの方々など色々なステークホルダーと話すことができ人との出会いがあることや、調整能力を養うことができること、企業側とは逆の視点から見ることができることを挙げ、その一方で海外と違い日本では行政が人材交流に入っていけないことが課題点として議論されたとをご紹介いただきました。
Cグループではヤンセンファーマ株式会社の内山 麻希子氏より、現状の課題としては出産というライフイベントを踏まえてどうキャリアを築いていくかが大きく、人それぞれがその時点での自分のやりたいことを選択していくことや、周囲の理解ある環境が重要であること、また女性登用の機会をポジティブに捉えて機会を活かすことにより、後に続く人に繋がればいいのではないかとの意見があったとご紹介いただきました。
約3時間のオンラインシンポジウムは大脇PhRMA Translational Research Subcommittee代表による閉会挨拶とともに幕を閉じました。
本シンポジウムの参加者からは、「産官学が気軽に意見交換できる場として大変有用であった。継続いただきたい。」、「とても刺激になった。もっと積極的にキャリアを動かす必要があると気づいた。」、「仕事と子育てに追われて、キャリアについてじっくり考える時間がなかったので良い機会となった。質疑も活発で良かった。」などのコメントが寄せられました。
【シンポジウムの模様】
■『第5回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
~がん治療薬開発に必要なBio-infrastructure とは~