ヤング・サイエンティスト・シンポジウム -Young Scientists Symposium 2015-

Young Scientist Symposiumヤング・サイエンティスト・シンポジウム

ヤング・サイエンティスト・シンポジウム

ヤング・サイエンティスト・シンポジウムは、PhRMAが2013年に発表した、基礎研究に携わる日本人の若手研究者を対象とした人材育成支援プログラム『ヤング・サイエンティスト・プログラム』の一環として実施するものです。
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第4回目となる今回は、第39回日本分子生物学会年会のプログラムの一つとして、ランチョンセミナー/フォーラムの2部構成で実施します。

日本の課題であるトランスレーショナルリサーチ(TR)のシーズ探索から臨床研究、さらには企業への導出の仕組みと実績についてなど、第一線でご活躍されている方々の生の声をご紹介します。今後のキャリアデザインの参考にしてみませんか?
本会が、ライフサイエンスの進歩に寄与されている若手基礎研究者の方々にとって、ご自身の研究を異なる視点から見ることによって生まれる新たな価値の創造や、創薬への可能性について考えるきっかけとなることを願っております。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

第1部 ランチョンセミナー
※第39回日本分子生物学会年会の参加者の方のみ( 先着 200名)
第2部 フォーラム
どなたでもご参加頂けます(先着300名)※参加無料

プログラム

第1部:ランチョンセミナー 11:55-12:45
モデレーター:井上 治久  京都大学iPS細胞研究所(CiRA)教授
講演

トランスレーショナルリサーチ入門:
研究が実用になるまで

勝野 雅央 名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科教授

第2部: フォーラム 18:15-20:15
モデレーター: 勝野 雅央  名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科 教授
  岡田 潔 大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 講師
講演1: Johnson & Johnsonの海外における
オープンイノベーションへの取り組みと
日本におけるチャレンジ
楠 淳  Director, New Ventures Japan, Asia Pacific Innovation Center, Johnson & Johnson INNOVATION
講演2: AMEDにおける取り組みの紹介  
  草間 真紀子 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
戦略推進部医薬品研究課 主幹
講演3: アカデミアによる分子生物学の研究成果を
創薬開発につなげる試み
  桑原 宏哉 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学 特任助教
講演4: ラボでの発見を社会価値につなげるプロセス
  河野 悠介 JITSUBO株式会社 代表取締役
講演5: 医療開発研究を行う大学において必要な
知財戦略
  石埜 正穂 札幌医科大学 医学部医科知的財産管理学 教授
パネルディスカッション  19:30-20:15 上記演者と参加者の皆様を交えたディスカッション

第2部フォーラムお申し込みフォーム ※参加無料

お申込みありがとうございます。下記に記入してください。
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TR関連や研究職のご経歴がある場合にはご記入下さい
(例:TR研究歴5年、基礎研究歴2年など)
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(具体的に)
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例)03-0000-0000
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トランスレーショナル・リサーチ(TR)に興味がありますか はい  いいえ
TR研究に携わっていますか はい  いいえ
→はい、と答えた方は、具体的にどのような研究に携わっていますか
TRを進める上でのハードルは何だと思いますか
ご自分の基礎研究を今後TRに繋げていくために、こんなシステムがあったら、と思うことがあれば自由にお書きください

アクセスマップ

パシフィコ横浜

みなとみらい駅より徒歩3分
桜木町駅より徒歩12分、バスで7分、タクシーで5分
横浜駅よりタクシー7分、シーバス(船)で10分

ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >演者略歴

第1部ランチョンセミナー

講師

勝野 雅央
名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科 教授
<略歴>
1995年3月
名古屋大学医学部卒業
2003年3月
名古屋大学大学院医学系研究科修了(医学博士)
1995年4月~1997年3月
名古屋第二赤十字病院 研修医
1997年4月~2000年3月
名古屋第二赤十字病院 神経内科
2003年4月~2004年10月
名古屋大学大学院医学系研究科神経内科 客員研究員
2004年4月~2005年3月
名古屋大学高等研究院 特任講師
2011年4月~
名古屋大学大学院医学系研究科神経内科 特任准教授
2012年12月~
名古屋大学大学院医学系研究科神経内科 准教授
2015年7月~
名古屋大学大学院医学系研究科神経内科 教授

第2部フォーラム

モデレーター

岡田 潔
大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 講師
<略歴>
2002年
佐賀医科大学医学部卒業
2002年
国立大阪医療センター整形外科 研修医として勤務
2004年
済生会泉尾病院整形外科 医員として勤務
2005年
関西労災病院整形外科 レジデントとして勤務
2006年
大阪大学大学院医学系研究科入学
主に神経再生に関する基礎研究に従事する。
2010年
同学博士課程修了。大阪大学医学部付属病院未来医療センター 医員として、附属病院整形外科にて勤務しつつ、再生医療臨床研究の支援、トランスレーショナルリサーチの実践や、医療機器の開発支援などに従事。
2011年
大阪大学大学院医学系研究科 助教
2011年
厚生労働省医政局研究開発振興課 ヒト幹細胞臨床研究対策専門官として、ヒト幹細胞臨床研究の審査や、指針の見直し業務に従事。
2012年
福島県原子力災害現地対策本部医療班長として被災地の救急体制確保等の業務に従事
2012年
厚生労働省医政局研究開発振興課課長補佐(高度医療専門官併任)として、臨床研究中核病院整備事業や高度医療の審査、再生医療新法の策定に従事。
2012年
独立行政法人医薬品医療機器総合機構再生医療製品等審査部の特任職員(常勤)として、審査・相談業務に従事
2013年
同機構医療機器審査第二部併任
2013年
大阪大学医学部附属病院未来医療開発部特任講師として手の外科診療業務に並行して、再生医療研究、橋渡し研究、規制科学の推進事業に従事。
2015年
大阪大学医学部附属病院未来医療開発部 講師 現在に至る

講師

楠 淳
Director, New Ventures Japan, Asia Pacific Innovation Center, Johnson & Johnson INNOVATION
<略歴>
1988年3月
星薬科大学大学院薬学研究科博士前期課程修了
1988年4月~2001年3月
富士レビオ㈱医薬研究所
1990年4月~1991年10月
千葉大学医学部第二内科 脂質代謝研究室出向
1997年12月~2001年1月
米国マウントサイナイ医科大学 心血管研究所出向
1998年9月
薬学博士(論博)星薬科大学
2001年4月~2008年7月
万有製薬㈱ つくば研究所
2001年4月~2002年9月
生物医学研究所 主任研究員
2002年10月~2004年3月
プロジェクトチームリード(課長)
2004年4月~2006年3月
代謝性疾患領域研究部 脂質代謝研究グループリーダー(マネージャ-)
2006年4月~2008年7月
同上、脂質・栄養代謝研究グループリーダー(ディレクター)
2008年8月~2011年3月
リリーシンガポール創薬研究センター㈱
糖尿病創薬研究部門 部門長(ディレクター)
2011年4月~2014年7月
日本イーライリリー㈱ 医学科学本部
2011年4月―2012年12月
糖尿病領域シニアクリニカルリサーチサイエンティスト
2013年1月~2014年7月
糖尿病領域メディカルリエゾングループリード(部長)
2014年8月~
現職

講師

草間 真紀子
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)  戦略推進部医薬品研究課 主幹
<略歴>
1997年3月
東京大学薬学部卒業
1999年3月
東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了
1999年4月
東京大学医学部附属病院薬剤部
2007年5月
東京大学大学院薬学系研究科 医薬品評価科学講座 助教
2010年11月
学位取得(博士(薬学))
 (2011年年6月-8月 2012年年6月-8月 米国食品医薬品局(FDA)臨床薬理部(OCP)客員研究員))
2013年2月
東京大学大学院薬学系研究科 医薬品評価科学講座 講師
2015年4月
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)出向 現在に至る

講師

桑原 宏哉
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学 特任助教
<略歴>
2002年3月
東京医科歯科大学医学部医学科 卒業
2002年4月
虎の門病院 内科病棟医
2004年4月
東京医科歯科大学医学部附属病院 神経内科医員
2005年6月~2007年5月
横須賀共済病院 神経内科医員
2007年6月~2008年3月
東京医科歯科大学医学部附属病院 神経内科医員
2007年4月
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学 大学院生(博士課程)
2011年4月
東京医科歯科大学医学部附属病院 神経内科医員
2011年6月
東京都立墨東病院 内科(神経内科)医員
2013年4月
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学 特任助教 現在に至る

講師

河野 悠介
JITSUBO株式会社 代表取締役
<略歴>
2002年
東京農工大学農学研究科修了 農学修士
2002年
DIC株式会社にて研究開発、製造、事業開発に従事
2005年
当社創業メンバーとして参画、Molecular Hiving™、Peptune™の両基盤技術の開発を主導
2012年
代表取締役CEO就任

講師

石埜 正穂
札幌医科大学 医学部医科知的財産管理学 教授
<略歴>
1982年3月
北海道大学農学部 卒業
1988年3月
札幌医科大学大学院医学研究科博士課程修了
1988年4月
セントルイス大学分子ウイルス学研究所 ポストドクトラル・フェロー
1991年4月
札幌医科大学医学部附属がん研究所生化学部門 助手
1998年2月
同上 講師
2003年9月
弁理士登録(第12817号)
2004年4月
札幌医科大学知的財産管理室 室長(兼)
2005年8月
札幌医科大学医学部衛生学講座 助教授
2006年4月~
札幌医科大学附属産学地域連携センター 副所長(兼)
2011年10月~
札幌医科大学医学部医科知的財産管理学 教授
2013年5月~
東京医科歯科大学 客員教授
ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >講演内容
第1部ランチョンセミナー

講演

勝野 雅央
名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科 教授

トランスレーショナルリサーチ入門:研究が実用になるまで

 遺伝子編集・解析やイメージングなど分子生物学研究における技術の進歩はめざましく、がんや難病とはじめとする多くの疾患の分子メカニズムが明らかとなってきています。こうした病態の解明は、化合物スクリーニング、動物モデルを用いた非臨床試験などのステップを経て、臨床試験における検証へと展開されています。本講演では、神経変性疾患に対するトランスレーショナルリサーチ(TR)の実際を紹介するとともに、今後の展望についても解説します。
 球脊髄性筋萎縮症(SBMA)はアンドロゲン受容体(AR)遺伝子におけるCAG繰り返し塩基配列の異常延長を原因とする神経変性疾患であり、異常AR蛋白質が運動ニューロンの核内に蓄積することが病態の本質と考えられています。我々はモデルマスウを用いた解析により、本疾患におけるニューロン変性の病態がテストステロンに依存していることを明らかにし、この仮説に基づきテストステロンの分泌を抑制するリュープロレリン酢酸塩のSBMAに対する第Ⅲ相臨床試験を実施しました。その結果、罹病期間が10年以内の被験者のみを対象としたサブ解析では有効性が示唆されたことから、発症からの期間が薬効に影響を及ぼすと考えられました。これらの結果は、神経変性疾患の分子標的治療が可能であることを示唆する一方で、今後の開発をさらに推進するために発症前~早期の治療介入、ヒトの病態に基づく治療法開発、臨床試験デザインの改良など、いくつかのイノベーションが必要であることを意味していると考えられます。
 基礎研究を臨床応用していくためには、病態の本質に迫る基礎研究の結果と、それを検証するための臨床研究手法が必要不可欠です。臨床応用は研究のゴールではなく、基礎研究の成果を臨床で検証する中で生じる疑問をさらに解決していく、臨床から基礎への展開(リバースTR)も重要です。本講演が、TRによってどのように研究と医療が変わるのかを皆さんに考えていただくきっかけになればと思います。

第2部フォーラム

講演1

楠 淳
Director, New Ventures Japan, Asia Pacific Innovation Center, Johnson & Johnson INNOVATION

Johnson & Johnsonの海外におけるオープンイノベーションへの取り組みと日本におけるチャレンジ

 弊社は、ジョンソン・エンド・ジョンソンにおけるイノベーションの推進、すなわち「リソースとアイデア、そしてテクノロジーを強力なネットワークで結ぶこと」を実現し、新しい価値を継続的に生み出すために、世界的な科学技術の拠点であるカリフォルニア、ボストン、ロンドンそしてアジアパシフィックにジョンソン・エンド・ジョンソンイノベーションセンターを開設した。弊社の目標は、医薬品、治療用医療機器、コンシューマー製品の領域における新たな価値・イノベーションを発掘し、育成して革新的な医療ソリューションとして進化させることにより、世界中の人々の生活改善に寄与することにある。
 これを実現するため、各イノベーションセンターには、担当地域におけるアカデミア、バイオベンチャー、製薬企業、投資家ならびに政府機関など、イノベーションの発掘・育成・促進に必要なパートナーとの関係構築やプロジェクトの提携を円滑に進めるために、科学、事業開発、法務、財務、プロジェクトマネージメントなどの専門家を擁し活動を行っている。また、ヘルスケア分野におけるスタートアップ企業を育てるためにレンタルラボ(J-Lab)を運営し、地域のライフサイエンス・エコシステムの発展に貢献している。
 本講演では、弊社のオープンイノベーションへの取り組み、特に米国のケースを中心に紹介し、日本の現状についてグローバル企業の視点から考察する。

講演2

草間 真紀子
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 戦略推進部医薬品研究課 主幹

AMEDにおける取り組みの紹介

 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)は、医療分野の研究開発及びその環境整備の中核的な役割を担う機関として2015年4月に設立された。AMEDの管理する研究事業は文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省の予算に計上される一方で、2016年度は内閣府に計上された科学技術イノベーション創造推進から調整費が充てられた。
AMEDでは、9つの重点分野を中心とする医療の基礎から臨床までの研究開発を一貫して推進しており、その一つである「オールジャパンでの医薬品創出」分野では、アカデミアや産業界と連携しながら、新薬の創出や、革新的医薬品、希少疾病治療薬などの研究開発を支援している。
このたびは、戦略推進部医薬品研究課における事業を中心に、産学協働スクリーニングコンソーシアム(DISC)や次世代蛋白質間相互作用(PPI)阻害ライブラリと中分子創薬、構造展開ユニット、ベンチャー支援事業、そして、参画企業も一定の研究費を拠出する産学官共同創薬研究(GAPFREE)などのAMED設立後に企画立案した事業を紹介したい。
なかでも、GAPFREE事業は、米国NIH-NCATSや英国MRCの官主導の産官学共同創薬研究プロジェクトとは異なる日本独自のpublic private partnership創薬モデルである。民間資本だけでは滞りがちな医薬品開発プロセスやその問題点を見つけ、アカデミアや企業の需要をマッチングさせ、ファンディングすることにより、研究だけでなく人材や情報の交流の活性化を図りたい。まだ始まったばかりでありサイエンティフィックな成果はまだ上がってないが、企業研究者と医療系アカデミア研究者、また、通常はコンペティティブな企業同士のコミュニケーション促進という成果は出始めている。
AMEDは設立後間もない段階ではあるものの、研究者や企業からのフィードバックを受け、日本のアカデミアや企業の成果やノウハウを創薬に活かし、国民に還元すべく、今後も司令塔として基礎から実用化まで一貫した医療系研究を支援していきたい。

講演3

桑原 宏哉
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学 特任助教

アカデミアによる分子生物学の研究成果を創薬開発につなげる試み

アカデミアによる分子生物学の研究成果は、論文や学会での発表により学問としての価値を生み出し、若手研究者のモティベーションやキャリアパスに大きな影響を与えている。一方で、分子生物学の研究成果を創薬などの実用化につなげる取り組みが、ますます重要視されるようになっている。
我々は最近、東京大学との共同研究にて、既存のシステムよりも著しく効率的に血液脳関門を越えて脳に到達するドラッグデリバリーシステムを開発した。大部分の薬が脳に行きわたらないために多くの脳疾患が難治性となっている現状を考慮すると、我々の研究成果は様々な脳疾患に対する創薬へとつながる可能性がある。この成果を基に、東京医科歯科大学と東京大学の双方発のベンチャー企業「Braizon Therapeutics」社が設立され、トランスレーショナルリサーチへと進展した経緯を紹介したい。
また、抗体医薬に続く次世代の分子標的療法としての期待が大きい核酸医薬として、従来からのアンチセンス核酸やsiRNAよりも標的分子の優れた発現抑制を実現しうるヘテロ核酸を、我々の研究室で開発した。mRNA、non-coding RNA、micro RNAなどの様々な分子に対してデザイン可能であり、新規創薬としてのブレイクスルーをもたらす可能性がある。この成果を基に、東京医科歯科大学発のベンチャー企業「Rena Therapeutics」社が設立され、やはりトランスレーショナルリサーチを推進している話題にも言及したい。
我々は臨床医として、自身の手がけた研究成果を患者さんに届けることにモティベーションを見出し、分子生物学の研究を行っている。分子生物学の研究成果は、学問の発展に寄与するのみならず、実用化を目指すことのできる有望なシーズを多く含んでいる。分子生物学の研究成果をトランスレーショナルリサーチへと発展させる意義や方法につき、アカデミアの立場から議論したい。

講演4

河野 悠介
JITSUBO株式会社 代表取締役

ラボでの発見を社会価値につなげるプロセス

はじめに
当社は、東京農工大学で発見された要素技術をきっかけに、2005年に創業した。研究室での発見をきっかけに、自分達の手で世の中の課題を解決し貢献できる!という熱い思いだけを頼りにスタートアップし、運に助けられ、また多くのご縁に支えられて、現在はペプチド医薬品に特化した研究開発事業に取り組んでいる。本講演では、弊社における要素技術の発見、展開のストーリーを踏まえ、ラボでの発見を社会価値に繋げる上で重要と思うことについて共有したい。

シード技術の開発(創業前)
当社の基盤技術に繋がる発見は、演者の当時の研究テーマであった、有機電解反応開発に由来する。通電する為には反応溶媒中に指示塩を溶解させる必要があるが、合成後の化合物は塩から単離する必要があった。そのため反応数をこなすには後処理工程が律速になることから、この問題の解決を試みた。結果として、温度変化によって、均一/不均一をコントロールする疎水性有機溶媒と親水性有機溶媒の組み合わせを見出すことに成功した(Fig.1)。

ペプチド用途への展開
しかしながらこのシード技術には問題もあった。まず、ターゲット化合物の疎水度によって分配効率が変わってしまう。また、一定の分離能力を保持した疎水性分離補助基をターゲット化合物に付加させ、タグとして利用すれば物質生産方法としてターゲット化合物に依存せず、普遍的に分離の簡便性を享受できるが、タグの脱着の手間がかかる。ここまではTechnologyアップの方向性を示すものである。更に進んで、これらの技術を活用出来るマーケットを考えると、当時ペプチド医薬品の分野は樹脂をタグとして利用する固相合成法(SPPS)が主流であった。当社の可溶性タグをペプチド分野に持ち込む事で、従来の製造技術の弱点を克服しうると考え、ペプチドに焦点を絞った開発を進めてきて、Molecular HivingTMの事業化に成功した(Fig.2)。

ラボの発見(Science)を社会価値につなげるには
上述したストーリーはラボでの発見がベンチャー事業を通じて社会に還元されていくプロセスの一つを紹介したに過ぎないが、新しい発見とそこから事業化までの間には大きなギャップが存在する。ラボの発見は「新しい」のはほぼ間違いないが、「何に役に立つ」かはその段階では分からない事が多くある。ギャップを見極め、埋めていくために、その「新しい発見」の本質は何か?という足元を見る目に加え、世の中が向かう方向性を見極めながら今後どのような解決策が必要となるか遠くを見つめる目の双方が必要であると実感している。その上で、自らがゲームチェンジャーに成れるストーリーを創造し、既存の常識に囚われる事なく挑戦し続けるところにベンチャー事業の醍醐味があると思う。

講演5

石埜 正穂
札幌医科大学 医学部医科知的財産管理学 教授

医療開発研究を行う大学において必要な知財戦略

製薬企業は「自前主義」を見直し、オープンイノベーションを開発戦略の中心に据えつつある。その背景には、分子標的治療を実現するバイオ医薬品やDDS、治療行為と一体化した再生医療等の技術の台頭も存在している。これら新しい医療の開発を担う主体として、病院を有する大学等の公的機関の役割が益々重要となっている。
医療開発の新しい枠組みにおいては、大学等の研究成果に基づく開発シーズが、医師主導治験等による安全性・有効性の検証(トランスレーショナルリサーチ)を経て、製造販売を行う企業にバトンタッチされていく。しかし技術移転後の開発フェーズには多額のコストが必要で、投資の担保やインセンティブの意味で特許の存在は欠かせない。低分子医薬シーズの開発においては、これを製薬企業が確保してきたが、新しい枠組みでは、開発の初期段階を担う大学等で特許を確保しておかなければならない。知財戦略について、大学で真摯に取り組む必要が生じてきたのである。
残念ながら現時点において、大学側にその備えが十分あるとは言い難い。発明が生まれたら、弁理士に特許明細書を書いてもらって企業に売る、という古いTLOのビジネスモデルに沿って、基礎研究成果を特許に「翻訳」した程度の特許がいまだに量産されている。しかしそもそも、論文と特許明細書とは目的の違う文書であり、それらを生むために必要な研究戦略も同じではない。研究者が論文用の研究成果を弁理士に丸投げして特許明細書を書かせる行為は、論文の執筆(あるいはストーリー構築)を代筆業者に任せる行為に等しい。もちろん、特許明細書は法律文書であり、個々の研究者にこれを作成するほどの専門性を求めることも非現実的といえる。理想的な特許を生み出すためには、研究者が特許や開発に対する最低限の知識を身に付けるとともに、大学等においても特許・研究・開発に精通した専門人材によるサポート体制を整えることが必要といえる。

ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」とは

2013年から「ヤング・サイエンティスト・プログラム」の一環として米国研究製薬工業協会(PhRMA)の支援のもと、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団(本部:米国ワシントンDC)とともに実施している、グローバルに活躍する人材育成を目的とした米国研修プログラムです。本年9月の実施で、第4回目を迎えました。

具体的には、医薬に携わる日本の若手研究者を米国に短期間派遣し、米国におけるトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品研究、規制慣行について知見を広げ、この経験をもとに新たなシーズ創出へと活かす機会を提供しています。

派遣される日本の医療・医薬品研究分野に携わる研究者の方々は、ワシントンDC、フィラデルフィアおよびボストン等において、米国政府の医療政策部署、シンクタンク、医薬品研究部門、民間製薬会社、大学等における関係者が、それぞれ新薬開発から製品化に至るまでの過程でどのように連携しているかを含め、米国のトランスレーショナルリサーチや医療エコシステムの実情を幅広く学ぶ機会を得ています。

※2016年9月訪米中の様子

今回のシンポジウムでは、企画段階から「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」参加経験者の皆様に携わって頂きました。

プログラム詳細、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団に関しましては、下記リンクからもご参照頂けます
The Maureen and Mike Mansfield Foundation

【2016年プログラム参加者の声】

●藤田浩二 氏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 整形外科 )
米国で最先端のトランスレーショナルリサーチに触れ、日本の目指すべき方向、取り入れることができる内容を考えてきました。
日本でのトランスレーショナルリサーチ発展に貢献できるよう努力します!
●島津 裕 氏(京都大学ウイルス・再生医科学研究所)
大変貴重な経験をさせて頂き、ありがとうございました。
Translational Researchとは、単なる橋渡し研究ではなく、もっと裾野の大きい概念だということを肌で感じた2週間でした。今回得られたことを、少しでも後進に伝えていければと思っています。
●大浜 剛 氏(山口大学共同獣医学部)
2週間のプログラムは驚きの連続でした。アメリカの医療エコシステムには日本に比べて遥かに多くのステークホルダーが存在し、そのことがトランスレーショナルサイエンスの発展の基盤となっています。日本はかなりのビハインドを負っており、個人のマインドから社会構造まで様々なレベルで変革が必要であると感じました。今回の経験を個人として、また一緒にプログラムに参加した皆さんとどう生かして行くか、難しい宿題を頂きましたが、必ず何らかの形で貢献して行きたいと思います。このような機会を与えて下さいましたPhRMAおよびマンスフィールド財団の関係者の方々に深謝致します。
●中田はる佳 氏(東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 公共政策研究分野 特任研究員)
2週間の短期間で30件近い訪問や面談の機会をいただきました。米国のトランスレーショナルリサーチの関係各所を網羅的に見ることができ、全体像をつかむことができました。訪問先の方々、面談相手の方々はもちろん、異なるバックグラウンドながら同じ関心を持つ参加者の皆さんとも交流を深めることができ、人脈形成にも有意義でした。今後キャリアを考える上でも非常に参考になり、今回得られた知見を今後最大限に活用・還元していきたいと思います。
●橋詰 淳 氏(名古屋大学神経内科)
2016年9月11日から9月25日まで、2週間をかけてワシントンDC、ボルティモア、フィラデルフィア、ボストンでの会合と現場視察を通じて、米国のトランスレーショナルリサーチを培うエコシステムについて学ぶ機会をいただきました。私の日常業務における今までの体験は、医師主導治験の調整事務局の一員として治験を遂行すること、またPMDAの専門委員として医薬品評価にかかわることでしたが、本プログラムで米国における医薬品開発のエコシステムを実感することで、私の現在の日常業務の位置づけが理解でき、そして、今後目指すべき方向性が示されたように感じています。
●西村幸香 氏(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 臨床研究・治験基盤事業部 臨床研究課)
このたびはプログラムに参加させていただき、ありがとうございました。
2週間で約30ヶ所を訪問するという弾丸ツアーでしたが、多数の機関やグループがそれぞれに異なった方面から医薬品開発や医療政策に関与して実用化が進められ、人材や資金、技術が好循環するサイクルを形成している米国の現状を実感することができました。 今の自分にできることとして、まずは今回の経験を周囲の仲間に共有するという小さな一歩から 始めたところですが、今後、スカラーの皆さんとネットワークを広げながら議論を深め、 日本の実情に合ったトランスレーショナルリサーチの推進に向けて努力していければと思っています。
●加藤竜司 氏(名古屋大学大学院創薬科学研究科)
マンスフィールド-PhRMA研究者プログラムでの2週間は米国における薬を生み出す社会全体の取り組みを、政策、司法、規制、研究、ビジネス、そして多くの人との出会いを通じて学ぶことができた素晴らしい体験の連続でした。

このようなプログラムに参加できたことは、一人の研究者として、光栄の極みでした。
研究者、また、アカデミアの教育者の一人として、素晴らしいプログラムをご提供下さった皆様に深く感謝しております。
おそらく、日本国内を見渡しても、これほど多くのトランスレーショナルリサーチにおける米国の現場を巡り、創薬を巡るエコシステムを深く知ることができる体験を個人レベルで得ることは不可能だと思います。

米国のエコシステムを多面的に体験することができるよう緻密にデザインされた2週間のプログラムのお陰で、創薬を生み出すエネルギーは、どこから来るのか、そして、それをいかに「湧き出させて」いるのか、を初めて体験することができました。
また、日本では「病院~製品販売までの架け橋」というように捉えていた「トランスレーショナルリサーチ」が、「販売」や「ビジネスの成功」が最後ではなく、「薬を受け取る人達」を極めて強く意識した、熱意に満ちた潮流であることを知ったことは、創薬の一端に携わる人間として大きく研究観を変えるものでした。

今回得られた知識と経験を、日本社会にいかに広く発信・還元できるかは、素晴らしいプログラムを提供してくださったマンスフィールド財団とPhRMAへのご恩に報いるため、そして、本プログラムが目指しているもっと大きなゴールである世界に新しい薬を生み出す一助となるために、我々が2週間で受け取った大事なバトンだと感じています。少しずつですが、このバトンを送っていきたいと考えています。

本プログラムを見つけられた研究者の方には、想像を超える大きなものが得られるプログラムであり、何を置いても挑戦されることを強くお勧めします。
ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >アーカイブ

■『第3回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
トランスレーショナルリサーチの実践
~産官学 若手研究者がリーダーシップを発揮する時~

日時:
2015年12月10日(木) 9:00~14:30
会場:
京王プラザホテル
主催:
国立大学法人千葉大学・米国研究製薬工業協会(PhRMA)共催
後援:


厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)、
日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)

■『第2回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
飛躍するトランスレーショナルリサーチ
~若手研究者の成長と、産官学の連携を目指して~

日時:
2015年1月24日(土) 14:00~19:00
会場:
フクラシア東京ステーション
主催:
国立大学法人千葉大学・米国研究製薬工業協会(PhRMA)共催
後援:


独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、厚生労働省、文部科学省

■『第1回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム』
グローバル時代の創薬オープン・イノベーション
産・官・学それぞれの若手研究者への期待

日時:
2013年8月31日(土) 13:00~17:30
会場:
東京大学本郷キャンパス「伊藤謝恩ホール」
主催:
東京大学・米国研究製薬工業協会(PhRMA)
 
日本製薬工業協会、欧州製薬団体連合会(EFPIA)
後援:
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
ヤング・サイエンティスト・シンポジウム >関連リンク
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